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香川真司らが頼りにする日本人医師。
怪我の治療方針を決めるのは誰か?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJFA/AFLO
posted2020/02/21 11:30
2018年のロシアW杯でも日本代表に同行した池田浩医師。香川真司を筆頭に日本選手からの信頼は厚い。
順天堂大学は世界でも尊敬の対象。
ドルトムントに限らず、池田は海外のドクターから見下すような態度をとられたことはないという。それは池田の順天堂大学が、FIFAの定めるMedical Center of Excellenceに選ばれていることとも関係しているのかもしれない。
Medical Center of Excellenceに認定された病院数は、全世界でわずか49。FIFAに加盟する国と地域の数の合計は211になる。49という数の希少性がわかるだろう。
この49病院は、トップアスリートの診察数や手術数、研究の種類や論文の数などを基準にして、FIFAがスポーツ分野でトップクラスの医療サービスを受けられるとお墨付きを与えた病院だ。その大学で教授を務めているということで、池田は世界的にもリスペクトを受ける立場にあるのだ。
そんな香川のケースを前例に、若い選手たちから同様のお願いをされることも増えた。例えば、原口元気や、昨夏に欧州へ移籍した若手選手たちからも依頼を受けた。
「助けを求められれば力になりたい」
池田はこう話す。
「契約の際に伝え方を間違えればクラブ側から『君はうちのクラブのドクターを信頼していないのか?』と思われてしまう可能性もあります。何より僕は、契約に直接かかわるような立場でもありません。だから、選手から請われたときに『僕の名前をそこに書いていただいても結構です』と伝えるだけです。そして、助けを求められればいつでも力になりますよということです」
2014年のブラジルW杯以降に新たに発生した怪我をめぐって、ヨーロッパの主要リーグでプレーする選手とクラブの間で大きなトラブルに発展したケースはない。それにともなって、この「医療問題」が人々の記憶から薄れつつある。
しかし、それは池田をはじめ多くの医師と、選手たちの取り組みのおかげでもある。
だからこそ、池田は1人の医師として、選手が自分を必要とするなら助けになりたいと考えている。
「本当は怪我をしないことが一番です。でも、もし怪我をしてしまったら、その選手が、以前と同じパフォーマンスに戻ってはじめて100点になります。そうやって元気になった選手が活躍する姿を見るのが僕は一番嬉しいのです」