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香川真司らが頼りにする日本人医師。
怪我の治療方針を決めるのは誰か?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJFA/AFLO
posted2020/02/21 11:30
2018年のロシアW杯でも日本代表に同行した池田浩医師。香川真司を筆頭に日本選手からの信頼は厚い。
選手の保有権はクラブが持っている。
世界に目を向けても、母国で手術を受けたがる選手は多い。この傾向は決して日本人だけに限らない。
しかし、である。
治療に関しての大きな影響を持っているのはクラブ側だ。なぜなら、選手の保有権をクラブが持っているからだ。
クラブの思惑で選手の希望と異なる治療方針が立てられ、選手が苦労するケースを、池田は数多く見てきた。あえて名前を挙げるようなことはないが、サッカーのニュースをチェックしている人たちであれば、そういうケースにあてはまる選手の名前が浮かぶかしれない。
香川真司にセカンドオピニオンを提供。
そんななか、池田は選手とともに新たな取り組みを開始した。
2014年の夏にマンチェスター・ユナイテッドからドルトムントへ香川真司が復帰したあと、契約のなかに「セカンドオピニオン」として池田の診察を受け、意見を取り入れることを認めてもらう条項を作った。
「セカンドオピニオン」というのは、患者が1人の医師だけではなく、別の医師からもらう意見のことだ。香川からのリクエストを受けて、池田がそれに応じた形になった。
香川にとってドルトムントに所属するのは2度目。
1度目の所属期間だった2011年1月、香川はアジアカップ中に第五中足骨を骨折した。当時はドルトムントと香川の契約にそのような条項は入っていなかったが、そのときも手術とリハビリの後半までは池田の元で行った。ドルトムントが選手の意見にしっかりと耳を貸してくれるクラブだったからだ。
2度目のドルトムント在籍期間でも、香川は復帰まで1カ月以上を要する怪我を2度している。2017年6月の代表戦の左肩脱臼と、2018年2月のドルトムントの試合中での左足首の怪我である。
そのいずれの場合でも、契約書の中にある条項はきちんと考慮された。香川はクラブとの交渉にストレスを抱えることなく、治療とリハビリに専念できた。