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稲垣啓太も共感するヒップホップ界の
カリスマ・AK-69の“本気”の生き方。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byTakuya Sugiyama
posted2020/02/14 11:50
アスリートに支持され“闘う男の代弁者”とも称されるAK-69の楽曲。中でも『Flying B』はプロ野球選手の入場曲に多く使用されている。
幼い頃から剣道、警察官か自衛隊に。
実はAK-69自身も、幼い頃にスポーツを行っていたという。しかも、かなり本格的に。
「小学1年生から高校を中退するまで、真剣に剣道をやっていたんですよ。小学校のときは全国大会に出場するくらいのレベルで、将来は剣道でご飯を食べていきたいとまで考えていました。ただ、五輪競技にも入っていなかったし、(剣道が盛んな)警察官になるか自衛隊に行って、剣道を続けるんだろうなと思っていました」
インディーズシーンからその実力で注目を浴び、メジャーレーベルやUS〈Def Jam Recordings〉とサインを交わすなど、名実ともにヒップホップ界を代表するアーティストとなったように、剣道でも地道な活動でのし上がっていった。
「小学4年生頃まではずっとBチームだったんです。だからAチームに入ったときは、通っていた道場とは別の道場にも密かに通っていました。強くなった自分をイメージしながら、みんなの倍練習していたんです。そのうち市内で最強になり、県内でもトップクラスの成績を収められるようになりました。まさに、『うさぎとかめ』の“かめ”状態ですよね。周りよりも恵まれていない状況から成り上がることを、子どもの頃から経験していたんです」
常になりたい自分をイメージできている。
さらにAK-69はこう続ける。
「歌でも、正直、今でも自分よりもラップや歌がうまい人は五万といると思うんです。でも、絶対に負けないと思っているのは、常になりたい自分をイメージできていること。歌で成り上がっていったときに、“これはどこかで経験したことがあるな”と思ったら、剣道のときだなって思い出して。チャレンジするステージはかわりましたが、それを幼い頃に経験できたことは大きいですね」
「音楽」がある場所で戦う現在。
一見、スポーツとはすっかり無縁になったようにも見えるが、ステージで最高のパフォーマンスを披露するためのトレーニングは欠かさず行っているという。ライブ映像を見ると、その上半身は見事に鍛え上げられている。
「もちろん、アーティストなので見た目も大事だけど、一番はパフォーマンスのため。15年ほど前から筋力トレーニングを始めたんですが、見せるための身体作りから、徐々に変わりましたね」
約2時間のステージを、たった1人でアグレッシブにやり切る。そのために必要な心肺機能を高め、瞬発力などを鍛えているのだ。しかも、リーチマイケルや稲垣も所属しているジムで、アスリートとともにトレーニングに汗を流している。そこに一切妥協はない。
何のためにそこまで自らを追い込むのか。