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神戸と横浜、ゼロックスの激闘。
これはJリーグ新時代の幕開けか。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2020/02/10 11:50
ヴィッセル神戸の巨大補強がついに実を結んでいる。しかし、まだ目指す領域ははるか先にあるはずだ。
仲川のタイプを分析し、対応。
試合は、27分にイニエスタのパスに清水エスパルスから移籍加入したドウグラスが合わせて神戸が先制。しかし、36分にはマルコス・ジュニオールのゴールで同点に。それでも40分にはGKとDFのパス交換に圧力をかけた古橋亨梧がボールを奪い、そのままゴールへ流し込んだ。1-2と神戸リードでハーフタイムに入る。
「コンディションは良かったのに、前半は落ち着きがなく、自分たちのサッカーができなかった。パスを出すときの自信をはじめ、ナーバスになり、連動性が乏しかった」
横浜のアンジェ・ポステコグルー監督は試合後、前半の動きを反省していた。新加入のFWオナイウ阿道との連係不足もあったかもしれないが、昨季得点王とMVPを獲得した仲川輝人に輝きが見られなかったのには、神戸の攻撃の形も影響していた。
神戸はドウグラスと古橋の2トップだが、古橋が左ウィングのように開き、その後ろでプレーする酒井と中央のイニエスタの3人で左から攻撃するシーンが多い。その結果、マッチアップする仲川の威力を抑えていたとも考えられる。酒井は仲川への対応について次のように話している。
「ドリブルが得意なのはわかっていたし、中へ入ってもうまくプレーできる選手。でも、マリノスの試合を見ていて感じたのは、どちらかと言えば、外に張るのが好きなんじゃないかと考えていました。だから僕はむしろパスを出させるくらいの立ち位置をとった。
右サイドバックの松原(健)選手のところにプレッシャーをかけられていたので、ボールが出てくるコースを把握しながら、寄せることができた。(仲川に)ボールが入ったときに、しっかりと対応すればよかった」
松原を封じることが、対仲川だけでなく対横浜への対策にもなったようだ。
引いては思うツボ、前で守る。
酒井が続ける。
「オーバーラップした松原選手が中へ入ってきても、自分も以前似たような戦術をやったことがあるので、どこにポジションをとれば嫌なのかもわかっていた。だから、ある程度狙ってボールを奪うことができた。
松原選手にボールを入れられたときに、前へ出ずにディレイ(相手のプレーを遅らせる)という選択をしてしまうのは、マリノスの思うツボ。そこは勇気を持って前へ出てボールを獲りにいけた。それでマリノスはてこずったのかなと思います」