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サントリーの攻撃ラグビーとは何か?
SH流&SO田村熙が語るパスの極意。
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byNanae Suzuki
posted2020/01/30 11:50
サントリーのSO田村熙。W杯で活躍した優を兄に持つ26歳は、代表入りも期待される逸材だ。
対策よりも、我が道を貫いて勝つ。
ただ、テーマに「守備」を掲げながらも、アタックには強いこだわりを滲ませる。
「『アタッキング・ラグビー』はサントリーの文化。ヘイグ監督やコーチ陣にはそれを絶対失いたくないと強く要望しました」
攻撃の形はすでにみんながわかっている、と流は言う。その共通認識の中で、より果敢にチャレンジするアグレッシブさを加えたスタイルが指針となる。
流とコンビを組む田村はチームの理想像をこう話した。
「サントリーの場合、相手がどうこうではなく、自分たちがやりたいラグビーを出せている時がいい状態の時。(相手からすれば)わかっていてもボールを回されて攻略される、みたいな。
サントリーには攻撃のいいイメージが受け継がれていて、それは今もブレていない。そこは9番、10番を中心に自信を持ってやりたい。シーズンが進むにつれて、もっと良くなっていくと思います」
相手に応じて策を講じるチームは多くあれど、我が道を突き進めるチームはそう多くはない。つまり強者のラグビーである。わかっていても、止められない。これがサントリーが謳う「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」だろう。
ケレビも松島も使いこなす。
さらに今季は新戦力の活躍が目覚ましい。WTBテビタ・リーや新人とは思えない推進力で早くもチームの中核を担うNO.8テビタ・タタフら、生きのいい選手が揃っている。
なかでも流や田村が絶大な信頼を寄せるのがCTBサム・ケレビだ。フィジーにルーツを持つオーストラリア代表の破壊力はW杯でも世界レベルを実証済み。「練習で対峙していて、相手がどれだけ嫌かってことがわかる」と田村は笑う。
「ケレビや松島(幸太朗)さんもそうですが、サントリーには自分の“間合い”をうまく使える選手がたくさんいる。今はまだ、それぞれの個人技で打開している感じがあって、僕ら(9番と10番)がもっと良い状況で彼らにボールを持たせることができた場面はあったと思う。
それに『この時はケレビだろう』『この場合は松島だろう』と彼らに頼るだけのラグビーはしたくない。どんなに個人が優れていても、上のレベルにいけばいくほど、相手にとっては止めやすいアタックになってしまう。だから15人全員がオプションとなれるのがベストですね」
神戸製鋼戦でCTBラファエレ ティモシーが松島に対して激しくチャージしたように、“飛び道具”に対する警戒は当然高まっていく。だからこそ、サントリーのラグビーにおいてBK陣を操る田村、そしてFW陣を動かしてボールを配給する流が担う役割は大きくなる。