球道雑記BACK NUMBER
恩師が語るロッテ種市篤暉の秘話。
やんちゃ坊主が勉強も1番になった。
posted2020/01/25 11:40
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Kyodo News
青森県・八戸の中心街からバスに揺られること30分。八戸工大一高のグラウンドが見えてきた。
同地を訪れたのは秋が深まった11月中旬頃。取材は16時30分からの約束だったが、現地に到着すると、たちまち辺りが闇に覆われ、グラウンドを照らすライトだけが煌煌と光っていた。
秋の八戸は、日が暮れるのが早いなあ……。そんなことを感じながら、球場バックネット裏にある事務室のドアをノックすると、奥から気の良さそうな関西弁で話す男性が笑顔で迎えてくれた。
八戸工大一高の長谷川菊雄監督である。
2019年、高卒3年目にしてチーム最多タイの8勝を挙げた千葉ロッテ・種市篤暉(あつき)の恩師だ。
'08年に前監督の山下繁昌氏から同校の監督を引き継いでから今年で13年目を迎えるが、投手の才能を見抜く目利きと、育成力は確かなものがある。
「今日も会ったね、篤暉くん」
そんな長谷川監督のもとを巣立ったのは、種市の他にも今春に社会人野球のJR北海道に進む内沢航大(法政大学)や、昨年の東京六大学春季フレッシュリーグで明治大を相手に被安打1、11奪三振の圧巻の完封劇を見せた法政大の快速右腕・古屋敷匠眞(新3年)、専修大学の145キロ右腕・向井龍介(新2年)がいるが、種市を含めた彼ら全員が地元青森の中学軟式の出身というから驚きである。
スカウティングは基本、長谷川監督自身が動いている。
関西の下町出身らしいユーモア溢れるトークで、人との距離の詰め方が絶妙だ。種市を口説き落とした際のエピソードを聞かせてもらったが、これまたユーモアたっぷりだった。
「篤暉は当初、近所の三沢商業とかに行こうと考えていたと思うんです。だけど、僕は中学から彼が下校してくる時間を見計らって、毎日彼のところに通いました。たまたま近くを通りかかった体(てい)で『今日も会ったね、篤暉くん』『おっ、また会ったね篤暉くん』ってな具合で。ストーカー? ほんまストーカーですよね! アハハハ」