各地を渡り歩き、練習法を模索。

　さらに同校のコーチ時代から各地を渡り歩き、面白いと思った練習方法があれば積極的に取り入れた。もちろん相手監督も了承済である。

「山梨学院の吉田洸二監督が、まだ長崎の清峰高で指導されたときに何度か練習を見に行かせてもらったことがあったんです。そのときに丸太を使った練習をしているのを見て、『これ東北で流行らせても良いですか？　パクっても良いですか？』と聞きました。そしたら『是非やってくれ』ってことを言ってくださって、あれからもう15年くらい経つんですかね、丸太を持ったトレーニングは、今でもずっと選手達にやらせています。砂浜を走ったり、スーパーサーキットを何十種目も作ったりしてね」

　そうした厳しい練習を耐え抜き、種市ら原石たちは磨かれていった。

「篤暉は元気でやっていますか？」

　強化方法をひと通り話し終えると、長谷川監督は「篤暉は元気でやっていますか？」と逆質問をしてきた。高校時代の恩師と言えど、かつての教え子と会うのは年末に彼が帰省した時くらいだという。青森から遠く離れた千葉で、種市が元気に暮らしているのか、どうにも気になってしょうがない様子だった。

「高校時代は大人しいタイプの子でした。ハッキリ言って存在感がない子でしたよ。（当時は）やんちゃなヤツが多かったので、そこにひっそりといる感じで、プロに行った今でも当時の仲間に一番いじられているタイプだと思います。プロに行って、活躍したからって、みんなに気を使わせるようなタイプじゃないんですよね。

　それがマウンドに上がったら豹変するんだから本当に不思議です。マウンドで見せる顔は普段とは全然違うなって見てて感じます。もう闘志むき出しって感じで『おらあ！』みたいな感じで投げていますからね。普段見られないような凄いオーラを感じます」

　同校からは過去3人のプロ野球選手が輩出されているが、高卒でNPBに進んだのは今年で学校創立64年となる歴史で種市ただ1人。彼が千葉ロッテからドラフト6位で指名された2016年の秋は、学校全体が相当な盛り上がりだったという。

【次ページ】　学校のみんなが祝福していた。