GO FOR TOKYO 2020BACK NUMBER
日本の走幅跳の常識を変える男。
橋岡優輝「五輪メダルに手が届く」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byKanekoyama
posted2020/01/23 07:00
東京五輪でメダルに届く手応え。
その勢いのまま臨んだ9月の世界選手権は初出場で8位と、大会前に設定した入賞の目標もクリアした。
最大限の力を発揮できなかったという悔しさはあったが、世界トップとの差を「そんなに遠くはなかったと思う。東京五輪でメダルまで手が届くだろうというレベルにみんないる」と手応えも掴んだ。
一方で、「(決勝は)3本目までの記録で4本目以降も跳べるかどうかが決まってくることもあって、海外の選手は1本目からしっかりと記録を出してくる。世界のファイナルではそういう勝負強さが必要だとあらためて痛感しました。僕にはまだその安定感がない。怪我をせず、しっかりトレーニングを積んで、再現性を高めたいですね」と反省も忘れなかった。
「今、どう跳んだ?」
安定感を身に付ける上で1つの鍵になるのがジャンプ(跳び方)だ。
現在、橋岡は踏み切り後に空中で左右の足を2回入れ替える“ダブルシザース”で跳んでいる。
反り跳びで跳躍していた頃から「いずれは跳び方を変えなければならない」とは考えていたが、実はその日は、本人も予想しないタイミングで突然やってきたという。
'18年5月のゴールデングランプリ大阪。
「まったく(シザースを)練習していなかったのに、試合で急に跳び方が変わってしまったんですよ。跳躍後に森長先生に『今、どう跳んだ? シザースしたよな?』と聞かれたんですが、『いや、分からないです』って(笑)」
その要因は助走にあると推測した。
「もともと僕は助走のスピードがなかったので、大学に入ってから(助走)スピードを上げることを常に意識して練習してきました。最後(踏み切り)までスピードに乗った状態で走れるようになってテンポが上がった分、(空中で)足も回るようになったんじゃないかなと。憶測でしかないんですけど、コーチともそれしか考えられないだろう、と」