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日本の走幅跳の常識を変える男。
橋岡優輝「五輪メダルに手が届く」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byKanekoyama
posted2020/01/23 07:00
シザースを極めることが頂点への道。
ただ、急に跳び方が変わった反動で試行錯誤することも多かった。'18年シーズンは「苦労した」と苦笑いする。
「一度、以前の跳び方に戻そうとしたんですが、“絶対に跳ばないと!”という局面になると、どうしてもシザースになってしまったんですよね。これは、もう(今が)変わる時期なんだろうなあと」
世界を見渡せば、リオ五輪銀メダルのルヴォ・マニョンガ(南アフリカ)や昨年の世界選手権で銅メダルを獲得したファン・ミゲル・エチェバリア(キューバ)ら、トップレベルの選手の多くが空中で左右の足を入れ替えるシザースで跳躍している。28年間破られていない世界記録を持つマイク・パウエル(アメリカ)も、この跳び方で8m95という大記録を樹立した。
だからこそ橋岡も、より世界に近づくために、今、シザースを極めている。
「空中動作のすべてが納得できないですね。やっぱり突然(跳び方が)変わってしまって冬場の基礎的なトレーニングが足りていなかった分、若干バラバラのまま跳んでしまっていました。そこから見直さなければいけないので少し大変かなとは思います。もちろんシザース以外の跳び方でも勝てないわけじゃないと思いますが、僕に合った跳び方はシザースかなと思っています」
満足のいく跳躍には到底及ばないが、「(8m)50~60cmぐらいまではいける」という感覚も掴んでいる。「それを“絶対に行ける!”というか、確信的でより現実味を帯びるようなものにしていきたい」と意欲的だ。
21歳で迎える東京五輪は通過点。
21歳で迎える東京五輪は、「年齢的にもまだまだこれからより活躍できる年齢にはなっていくと思うので」と通過点と位置づけている。もちろん貪欲に表彰台も狙っている。
「そこでどれだけ失敗しないかが勝負になると思います。助走から踏みきり、空中動作、着地に至るまで、自分が妥協せずにどこまで追求できるかがカギになる」
周りの選手が大ジャンプしても、「自分がそれ以上に跳べばいいという考え。自分の強みはブレないメンタルの強さだと思っています。それはどんな試合であろうが変わりません」と自身にフォーカス。その冷静さとハートの強さは大きな武器だ。