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日本の走幅跳の常識を変える男。
橋岡優輝「五輪メダルに手が届く」
posted2020/01/23 07:00
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Kanekoyama
ロンドン、リオ五輪で出場さえもかなわなかった日本の男子走幅跳に大きな変革が起きている。
東京五輪参加標準8m22を3選手が突破し、一気に世界の第一線で戦えるレベルまで飛躍した。日本記録保持者の城山正太郎、津波響樹(つは・ひびき)、そしてこの中では最年少となる橋岡優輝だ。
父は棒高跳で7度日本一となり、母は三段跳びで3度日本一に輝いた。さらに叔父は走幅跳で2000年シドニー五輪に出場しているアスリート一家に育った。そういった意味では彼が陸上競技の道へ進むことは自然の流れだったとも言えるだろう。
「中学では絶対に部活に入らなければいけなかったんですが、野球部やサッカー部、バスケット部となるとどうしても少年団からやっている子たちに後れをとってしまう。それが嫌で(笑)。足の速さには自信があったので、陸上をやってみようかなと思って始めたんです」
中学時代は四種競技をこなし、高校から本格的に走幅跳に取り組んだ。すると才能が徐々に開花。2年生で初めて出場したインターハイで4位入賞を果たすと、3年時にはインターハイ、国体、日本ジュニア選手権を制覇し、高校3冠を達成した。
大学では昨年8月に更新されるまで日本記録を保持していた森長正樹氏の指導の下、さらに力を伸ばした。1年時には日本選手権で初優勝し(現在同大会を3連覇中)、'18年はU20世界選手権金メダル、昨年は世界選手権で8位入賞。日本走幅跳界のエースとして将来を嘱望される存在にまで成長した。
高校3年生で痛感した世界との差。
転機となったのは、'18年、大学2年時に出場したU20世界選手権の金メダルだ。
「高校3年生の時にもU20世界選手権に出場していたんですが、その時はただ世界との差を痛感させられたという感じで。でも、あれから2年経って同じU20世界選手権で優勝したことで、自分がやってきたことが間違いではなかったと思えることができましたし、今後シニアの世界でも戦っていけるという自信が生まれた大会になりました」
昨年8月のアスリート・ナイトゲームズ・イン福井では、1本目に8m32の大ジャンプを見せ、27年ぶりに日本記録を更新(その後、城山正太郎がさらに8cm更新)した。跳んだ瞬間は、「うまく踏みきれなくて」失敗したと思ったらしいが、それゆえ日本記録を更新したと知ったときは、「(自身の)先の可能性を感じた」という。