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エリート5姉妹の末っ子・菊池純礼。
スケート二刀流、ダブル優勝の快挙。
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byMatsuo/AFLO SPORT
posted2020/01/18 11:30
全日本選手権では「初めて滑った」という最終種目の5000mで7分34秒65を記録して3位に入り優勝を決めた。
昨年5月に富士急に移籍してから……。
だが、そこにとどまらないのが菊池という選手である。
「やっぱり、スピードスケートでも五輪を目指したい」
そう思ったのは、平昌五輪のチームパシュートで姉の彩花が金メダルに輝く姿を会場で見たとき。当時所属していたトヨタ自動車はショートトラックのチームしかなく、ナショナルチームの強化体制もショートトラックとスピードスケートは完全に分けられていたため、夢は封印されたが、心の中では種火を絶やさなかった。
状況が変化したのは昨年5月に富士急に移籍してからだ。
富士急には姉の彩花が在職中で、現在もスピードスケート部のコーチを務めている。また、ショートトラックのナショナルチームでヘッドコーチを務める長島圭一郎(バンクーバー五輪スピードスケート男子500m銀メダリスト)は姉の夫で、菊池にとっては義兄にあたる。
トップレベルで両立は極めて困難。
菊池の意向を受けた“家族”全体が、それならばと協力し合ったことでバックアップ態勢を整備していく見通しがついた。こうして'19年秋、菊池は4シーズンぶりのスピードスケート復帰を果たした。
ショートトラックとスピードスケートの両立は日本でもジュニア世代では珍しくなく、前述の通り、菊池自身も高校生までは二刀流だった。
けれども、トップレベルになれば話は別だ。リンクのサイズ(ショートは1周約111m、スピードは400m)や道具などが異なるほか、練習拠点や試合日程も異なったり重なったりで、両立は極めて困難。そのため、五輪で両方の代表になる例は滅多にない。
ショートトラックとスピードスケートの二足のわらじを履くことはどのように難しいのか。菊池によれば、「コーナーリングではショートトラックの技術が生きる」という反面、特性の違いに苦労する部分もあるという。