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東山が6年ぶりに掴んだ春高の舞台。
世界基準のバレーで目指す日本一。 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph bySankei Shimbun

posted2019/12/30 09:00

東山が6年ぶりに掴んだ春高の舞台。世界基準のバレーで目指す日本一。<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

ライバル洛南を倒し、6年ぶりの春高バレーに出場する東山。セッター中島を中心とした高速バレーで日本一を目指す。

「当たり前」を高いレベルに設定。

 松永はかつて豊田合成やパナソニックでプレーし、引退後は母校の中大で監督を務め、'14年から'16年まで全日本インカレでチームを3連覇へ導いた。石川祐希や関田誠大と、優れた能力を持つ選手が揃ったから、と嫉妬交じりに揶揄する人も少なくないが、「高校や大学ならこれが当たり前」と固定観念に縛られるのではなく、自身の経験をベースに「日本が世界で勝つためにはこれぐらいできるのが当たり前」と視野を広げた指導に定評がある。

 特に松永が中大での監督時代から重点的に取り入れた戦術の1つが、「常に一番はやいところから攻撃をつくる」ということ。

 単純にトスを速くする、動きを速くするというのではなく、レシーブの返球位置によって、セッターから一番近い場所の攻撃をどう使うか。そのうえで、相手ブロッカーとの駆け引きを考え、いかに複数の場所から攻撃準備をしてタイムロスをなくした状態から、多くのアタッカーが同時に攻撃参加できるか。

松永コーチも驚いた中島の対応力。

 一見すれば、高校生には難しいのではないか、と思うかもしれない。だが、最初から「できない」と決めつけるのではなく、高校生に対しても大学生やVリーグの選手と同様、目線を変えずになぜその攻撃を選択するのが効果的なのか、丁寧に繰り返し説き、実践させる。

 もちろん技術面ではクリアできないものもあるが、松永が指導に携わり始めた直後から、それをいとも簡単に、当然のごとくやってのけたのがセッターの中島で、その対応能力とセッターとしての力量に驚かされた、と松永は言う。

「たとえばレシーブがレフト側に返ったら、攻撃はどこをどう見せて、使うのが効果的か。それを説明すると、健斗は伝えた通りにやって見せる。これはすごいな、と。もしかしたら中大で同じようにやってきた以上のことができるようになるのではないかと、僕のほうがのめり込むほどでした」

 高校生の枠にとらわれない、世界のスタンダードをベースとした新たな東山バレーの構築。その第一歩が築かれようとしていた矢先のアクシデント。大方の予想を覆すことはできず、前年の京都大会は洛南に敗れた。

【次ページ】 中島が信頼を寄せる高橋。

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