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東山が6年ぶりに掴んだ春高の舞台。
世界基準のバレーで目指す日本一。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2019/12/30 09:00
ライバル洛南を倒し、6年ぶりの春高バレーに出場する東山。セッター中島を中心とした高速バレーで日本一を目指す。
中島が信頼を寄せる高橋。
あれから1年。4カ月に及ぶリハビリにも、中島は黙々と取り組んだ。
「治らないんじゃないか、という不安もありました。でもトレーナーさんから『これだけトレーニングをやってきたんだ、と自信にしよう』と言われて、前向きに取り組むことができた。そのおかげで、復帰した時は今まで以上にバレーが楽しく感じられたし、たとえ試合に出られなくても、外から見られたことが、セッターとしてプラスになりました」
そんな司令塔が全幅の信頼を寄せる存在、それが東山の主将、高橋藍だ。
1年時から注目された鎮西(熊本)の水町泰杜と共に、世代を代表するエースとして注目を集めてきたが、特に最終学年となった今季、高橋の進化と成長は目ざましい、と豊田監督と松永は口を揃える。もともとジャンプ力は高校生の中でも随一、パンチ力、テクニックと優れた能力をいくつも持つ選手ではあったが、週に2回、必ず行ってきたウェイトトレーニングの成果が最も大きな要素、と言うのは高橋自身だ。
「最初は連戦や、厳しい局面になっても耐えられる体力強化が目的でした。でもなぜこのトレーニングが必要か、理生さんから説明してもらって、実際取り組んで来たらジャンプ力が上がったし、踏み込むスピードも速くなった。そうなるとバックアタックのテンポも変わるので、今はパイプだけでなく、(より速い)ビックも打てるようになった。普通の高校生でそのテンポに対応できるセッターは健斗しかいないし、そんなセッターのおかげでレベルの高いことにどんどんチャレンジできています。
理生さんからは『高校で日本一になるためには、大学リーグで優勝できるチームにならないと勝てない』と言われているので、優勝して、この1年やってきたことが間違いじゃなかった、と誇りを持ちたいです」
豊田監督「いいチームが勝つ」
年明け間もなく始まる春高。
出場校のすべてが、各都道府県の熾烈な戦いを勝ち抜いてきたチームで、すべてに頂点へ立つチャンスがある。高橋や水町、インターハイを制した松本国際(長野)の柳田歩輝など、勝負強さと技術を備えたエースと呼ばれる選手も多くいる。だが、決してそれだけでなく、地道な練習を重ねた高い組織力、総合力を備えたチームが多いのも今大会の特徴だ。
後悔の敗戦を乗り越え、間もなく来るべき、決戦の時へ向けて。東山・豊田監督が言った。
「6年ぶりの春高、優勝候補と言われるけれど、ここまでたどり着いた、その道のりはそんな簡単なものではありません。勝ち続けることも大事だけれど、勝つだけでなく、負けた後にどうしていくか。いい選手がいるから勝った、ではなく、いいチームが勝つ。今年の春高は、本当にそんなやりがいのある大会になるのは間違いない。だからこそ、最後に勝ちたいですよね」
開幕の2020年1月5日。1試合目に東山は登場する。どんな姿で戦い、その戦いをライバルたちはどう見るのか。そして決勝の1月12日は――。ただただ、楽しみしかない。