第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER
区間エントリーから読む第96回箱根駅伝。
直球と変化球が交錯する各校の“戦術駅伝”やいかに。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2019/12/31 11:15
前回大会総合優勝の東海大学・両角速監督は「直球勝負」を挑んで来た。
岸本大紀が化ければ青学大にチャンスが!
対抗の一番手は、全日本大学駅伝で2位に入った青学大だ。
今回の区間エントリーを見ると、原監督の采配は基本的には直球だが、今回は変化球を織り交ぜている。特に、2区と補欠の人員配置は興味深い。
花の2区には1年生の岸本大紀を起用する。が、青学大が1年生をこのエース区間に起用するのは極めて稀。今後、岸本をエースとして大きく育てようという意図がうかがえるが、岸本は出雲駅伝の2区で区間賞、全日本大学駅伝も2区を担当して区間5位と結果を残している。
原監督は「岸本はどれだけ練習しても、食が細らない。見かけはほっそりしているけど、結構、骨太」と、2区での大駆けに期待している。岸本が将棋でいう「成金」となれば、青学大のチャンスは膨らむ。
そして、優勝争いに向けてポイントになってくるのは4区だ。前回、青学大は3区で首位に立ちながら、この4区で東洋大、東海大に抜かれ、流れを失った。
箱根駅伝の場合、失敗した区間があると、翌年の区間配置に影響を及ぼすと神奈川大学の大後栄治監督は話す。
「前回で失敗した区間があると、そこをどうしても補いたくなっちゃうんですよ」
この「大後理論」で考えていくと、原監督は補欠に入っているエースの吉田圭太(3年)を4区に起用するのではないか。吉田がエースらしい走りを見せれば、いい形で5区の飯田貴之(2年)にたすきをつなぐことが出来る。
復路の選手層の厚さは東海大に匹敵するだけに、4区終了時点での順位が重要になりそうだ。
東洋大・酒井監督は変化球派の代表格。
箱根駅伝の采配で、変化球の代表格が東洋大の酒井俊幸監督だ。
2014年に総合優勝をした時には、5区にスピードランナーの設楽啓太(現日立物流)を起用し、これがズバリ的中した。前回は4区にエースの相澤晃(4年)を投入、青学大5連覇の夢を潰した。
12月10日、チームエントリーの発表時に酒井監督は、今回の相澤の起用法についてこんな話をしていた。
「相澤は補欠に入れると思います。2区か4区か。ひょっとしたら、1区?」
冗談めかすように話していたが、フタを開けてみれば直球の2区。さて、この起用をどう読むべきか。