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“今年の女性100人”選出の今日和。
「相撲は私を幸せにしてくれるもの」 

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

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photograph byHiromi Ishii

posted2019/12/30 19:00

“今年の女性100人”選出の今日和。「相撲は私を幸せにしてくれるもの」<Number Web> photograph by Hiromi Ishii

イギリスBBCの「100 Women」に選ばれた今日和。春からは実業団で相撲を続ける。

改めて気付いた相撲の魅力。

 選手として稽古に励む一方で、彼女には小学生の頃から「海外で相撲を広めたい、指導したい」という夢がある。きっかけは中学生の頃に知ったJICA(国際協力機構)の存在だった。高校時代には相撲を通じて、「教育へのアクセスや生活環境など、均等に機会がない環境が存在しますよね。そこで自分も何か貢献したいという気持ちがあって」と、海外の国々の発展に何か役立つことができれば、と考えるようになった。

 相撲を通じて思い知った社会の現実をより深く理解しようと、立命館大学国際関係学部に入学した。英語やフランス語などの語学はもちろん、国際協力の在り方を多角的に考察している。

「大学では異文化コミュニケーションや開発経済を学んでいます。きっかけは自分が相撲を教えるときに、それが押し付けになるのは嫌だなと思ったこと。どうすれば人の個性を尊重しながら教えられるのか、知りたかったんです。開発経済では技術移転の話など、“これは相撲にも応用できるな”という話がいくつもあって非常に勉強になっています」

 今年7月にはアスリートやスポーツ学生のキャリアを応援するプロジェクトを利用し、昨年ゼミ合宿で訪れたラオスを再訪。現地の子どもたちに相撲を教えたという。

「指導というよりも、子どもたちと一緒に遊ぶという感じでしたね。相撲はルール説明もほとんどいりませんし、誰にでもすぐできるスポーツなので。全然言葉は通じませんが、それでも本当に楽しくて。自分がやっている競技が相撲で良かったなとあらためて思った瞬間でした」

 企画からセッティング、現地での運営やスタッフ確保、さらに指導に至るまで、ほぼひと通りの作業を今さんが1人で担ったという。

「大会を運営するって本当に難しいなぁと痛感しました。無事成功裏に終わらせることができましたが、それは自分の力というよりも、“相撲の力”なんだとあらためて思い知らされた出来事でもありました」

活動を尊重してくれた大学への感謝。

 幼い頃から続けてきた相撲が持つ力、周りに与える影響、そして愛。 

 選手として相撲を続けていただけでは決して気付けなかったことが多いと今さんは言う。こうした活動に理解を示してくれた大学、そして相撲部に関わるすべての人々に深く感謝している。

「普通なら(相撲で)強くなることや結果を残すことが最優先です。でも、大学では人間として成長することが一番だと背中を押していただきました。入学したての頃は、それまでの指導方法とまったく違っていて、“何も教えてくれないじゃん”と不満に思ったりしたこともあったのですが、伝統的な価値観や稽古方法を押し付けられるのではなく、学生が主体で個々の経験や個性を活かすような指導をしていただきました。今は“これこそが指導なんだ”とあらためて感じることが多いですね。こうしたプロジェクトも立命館大学相撲部だったからこそ参加できたと思っています」

【次ページ】 4月から実業団で新たなスタート。

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