相撲春秋BACK NUMBER
元大関照ノ富士、独白。
苦悩の2年間を乗り越え、関取復帰へ。
posted2019/12/27 11:50
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph by
Kyodo News
「たぶん90パーセントの人が『もう照ノ富士は辞めるだろう』『いつ辞めるんだ?』と思っていたと思うけど、10パーセントの人たちが、『もう1回、やれるんじゃない?』と信じて励ましてくれたんです」
悲願の関取復帰を決めた元大関に、笑顔はなかった。雌伏の時を耐え、心のうちで葛藤し、関取の地位に這い上がってきた照ノ富士。
2019年納めの九州場所で幕下優勝し、迎える新年の初場所では再十両として復活する。元大関が序二段まで番付を落としながら現役続行したのは、史上初のこと。そこからの関取復帰も、もちろん史上初のことだ。
そして、淡々とした口調で言う。
「ある意味、横綱でも――大横綱でも味わったことのない楽しさを味わっているのかも、とプラスに考えるようになりました」
その心は?
「相撲人生を2回楽しむというか。たぶん、新十両になった時とか、番付が上がっていく時って、みんなうれしくて心に残っていると思うんです。それを、自分は2回楽しんでるんですよ」
今だからこそ、前向きにそう言える。しかしその過程は――。
以下、元大関照ノ富士の独白。
ケガ、糖尿病、肝炎、腎臓結石……。
周りにはケガで番付が落ちたと思われてるみたいですけど、けしてそうではないんです。
2015年7月に大関に上がり、翌場所に右膝をケガして、2回手術しました。手術の後でも、2回、準優勝相当の成績を残していましたし、膝のケガをしてからも大関を維持できていたから、ケガだけが原因じゃないんです。
膝のケガとはうまく付き合っていたつもりですが、そこで糖尿病に罹ったり、C型肝炎にもなってしまった。あと腎臓結石も。
どうしても力が出ないんですよ。
普通、筋トレをやればやるほど筋肉が盛り上がっていくはずなのに、やればやるほどに疲れて筋肉が落ちる一方。大関から落ちた直後は番付を考えて休場しませんでしたが、2018年7月、幕下に番付が落ちることが決まってからは、覚悟を決めて4場所休場しました。