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ガットゥーゾが混乱ナポリを再建中。
選手の魂に訴える“闘犬”の指導術。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2019/12/27 11:15
テクニカルエリアでもやはり闘犬ガッドゥーゾ。現役時代と変わらないスタイルを見ると嬉しくなる。
派閥、一部選手との確執の噂。
謎が多かった。チームの成績が低迷してムードが悪くなると、ローカルメディアからは様々な情報が漏れる。「一部の主力選手とクラブ幹部が契約更新で折り合いがつかない」とか「アンチェロッティ監督と一部選手に確執がある」とか、はたまた「指揮官の指導に対して選手間で温度差があり、派閥に分かれている」とか。
急きょ合宿を実施すると、選手がボイコットするという事態にまで陥った。そしてクラブが「相互に尊重は不変」と発表しながらも、アンチェロッティ解任に至ったのだ。
ナポリの地元紙『イル・マッティーノ』によれば、指揮官からは「本当に解任でいいのか」という問題提起が何度となくされていたという。しかしヘンク戦後の勝利でも結論は変わらず、タイトルを期待された名将は就任から約1年半で解任となった。
錯綜する情報のなか、何が真実なのか外からは見えにくい。しかし確かなのはリーグ戦の成績が低迷していることと、環境が落ち着いていないということだ。
監督としてのキャリアは逆風続き。
翌11日、電撃解任の収拾役としてナポリが呼んだのは、あの“闘犬”ジェンナーロ・ガットゥーゾだった。泥臭い守備でミランに数々のタイトルをもたらしたドイツW杯優勝メンバーは、揺れ動くクラブの立て直しを委ねられた。
41歳。現役時代のイメージがいまも強く残るが、シオン(スイス)時代にプレイング・マネージャーを務めたことを皮切りに、指導者となって6年が経過している。昨季まではミランを率い、チームを5位でフィニッシュさせていた(UEFAファイナンシャル・フェアプレーによる処分のためEL出場権は剥奪)。
しかしながらそのキャリアは風変わり。どういう因果か、就任したクラブはことごとく何がしか大きな問題を抱えるところばかりだったのだ。
本格的なキャリアの開始は'14年のパレルモ(当時セリエB)だ。激情家として知られたマウリツィオ・ザンパリーニ会長(当時)からは、試合のフォーメーションの相談のため真夜中に電話がかかってくるという信じがたい環境。軋轢に苦しんだ挙句短期間で解任された。
その後ギリシャのクレタへ移ったが、4年間にわたって赤字を抱え込んだクラブの経営状況がひどく、選手たちへの給料は未払い。チームを形にしようとし、時には選手の給料をポケットマネーで肩代わりした。