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ガットゥーゾが混乱ナポリを再建中。
選手の魂に訴える“闘犬”の指導術。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2019/12/27 11:15
テクニカルエリアでもやはり闘犬ガッドゥーゾ。現役時代と変わらないスタイルを見ると嬉しくなる。
問題を抱えたチームをまとめる男。
2015年に就任したピサは、もっと酷かった。3部からセリエBまで昇格させたはいいが、クラブ会長が経営する関連会社に計画倒産の疑いが湧き上がり、その影響でクラブ経営が停止。一度辞任するが、運転資金の捻出までままならなくなったクラブを見るに見かねて監督復帰。強化まで面倒を見て、次の経営者が現れるまでなんとか延命させた。
つまり彼は、問題を抱えるチームを支えるスペシャリストなのである。
ミラン時代もそうだった。就任当時は野放図な補強の影響でチームがバラバラになり、ビンチェンツォ・モンテッラ監督を解任したような状況。そんなチームを1つにまとめた。チームに規律をもたらし、フィットしていなかったトルコ代表ハカン・チャルハノールらをはじめとした選手たちを蘇らせた。
しかも、単に精神論を説いただけではない。固い組織守備と縦へのショートカウンターを軸にしたサッカーで、チームを一体感のある組織にすることができた。
そして新天地となるナポリでも、やはり問題を抱えた状態での就任となったわけだ。
“父親”カルロからの言葉を胸に。
就任記者会見でガットゥーゾ監督は「サッカーにおける父親」と称するアンチェロッティと電話で話したことを明かし、ナポリがチームとして抱える問題について以下のように語った。
「ディフェンスラインやボールのつなぎなどには向上の余地がある。それ以外のことは、カルロさんから語ってもらった。それは自分のなかにとどめる」
しかし、第16節パルマ戦でチームの現実に直面することになる。
4分、守備の重鎮カリドゥ・クリバリーが、後ろのスペースに流れたなんでもないボールの処理をミス。これをデヤン・クルセフスキに奪われてゴールまで持っていかれた。
ゴールを決められたうえにクリバリーは故障退場に。エースのロレンツォ・インシーニェはチャンスの山を築くが、フィニッシュワークがことごとく雑。64分にアルカディウシュ・ミリクがようやくゴールを決めるが、アディショナルタイムに速攻からジェルビーニョに追加点を許し、1-2で敗れた。
まさに今季の縮図のような展開。守備の際は4人がフラットに並ぶ4-4-2から4-3-3にシステムを変えて挑んだが、問題解決には至らなかった。