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各競技団体でワンマン会長の問題が
露見。その背景に“東京五輪効果”。
posted2019/12/29 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
2018年、レスリングやボクシングなどさまざまな競技団体で、数多くの問題が生じた。資金面の流れの不透明性、パワーハラスメント、運営における公平性の欠如……。
それを受けて、2019年には改革の取り組みも進められた。
2019年6月10日には、スポーツ庁から「ガバナンスコード」が公表された。
これは、中央競技団体の運営の健全化を図る目的で策定が進められていた規範のことで、具体的には理事の就任時年齢の制限や在任期間が10年を超えないような再任回数の上限設定、違反行為に対する通報制度の構築、外部からの積極的な理事起用などが項目として設けられ、2020年からは統括団体が適合性審査を行うことになる。
透明性や多様性を求める方向がそこにうかがえる。
ただ、2019年に入っても、大きな注目を集めたテコンドーの問題などスポーツ界全体を見ると、まだ根本的な解決には至っていないように思える。
問題の根底には、長年にわたりしみついた体質がある。端的に言えば、力を持つ存在によるトップダウンで物事は進められてきた。
金銭疑惑をきっかけに退任。
古い話になるが、かつてのバレーボールの松平康隆氏などはその一例だ。
松平氏は1965年から男子日本代表の監督として、輝かしい功績を残した。速攻や時間差攻撃といったコンビバレーを築き、1972年ミュンヘン五輪で金メダルを獲得。
発揮された手腕はそれにとどまらない。メディアと提携して選手の露出を図ることで人気を高めた。テレビ番組においては企画の立案、スポンサーを見つけるなどした。
その後も、国内、海外において要職を担い、普及や資金を集めることに寄与した。
指導者としてだけでなく、1989年から務めた協会会長としても抜群の行動力でもってバレーボールに大きな貢献を果たしたが、ワンマン過ぎるという批判も出て、1995年に報じられた金銭疑惑をきっかけに、やがて退任するに至った。