スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
長い試合時間と新ルールの提案。
MLB、「打者最低3人」案に物議続出。
posted2020/01/04 08:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
大リーグのコミッショナー、ロブ・マンフレッドの提案が、また波紋を呼んでいる。
今度は「ワンポイント・リリーフの禁止案」を打ち出してきたのだ。
2020年以降、登板した投手は、最低限3人の打者と対決しなければならない。ただし、登板したイニングをその投手が終了させた場合は、1人もしくは2人の打者でもかまわない。――というのが提案の骨子だ。
提案の動機は、試合時間の短縮である。
たしかに、長い試合時間は、大リーグの慢性的な観客数減少を招いている。2009年の平均試合時間が2時間55分だったのに対し、2019年は3時間10分に延びた。だれた試合が観客の興を削ぐのは、当然のことだ。
2019年のワールドシリーズ第7戦の例。
マンフレッドは、原因のひとつとしてワンポイント・リリーフに眼をつけた。
監督がベンチとマウンドの間を頻繁に往復し、救援投手がブルペンから駆け足で、あるいはカートに乗ってのこのことやってくる。しかも、投球前にウォームアップが必要だ――この無駄を省けば試合時間短縮につながる、とマンフレッドは考えたらしい。
しかし、本当にそうだろうか。
私は反射的に、2019年のワールドシリーズ第7戦の一場面を思い出した。
7回表、2対1とナショナルズをリードしていたアストロズの監督A・J・ヒンチが、走者を一塁に置いた状況で、ザック・グリンキーに代えてウィル・ハリスを救援に送った場面だ。
ハリスは、その前17日間で8度も救援に立っている。
その疲労があったせいか、彼は次打者ハウイー・ケンドリックに右翼へ逆転2ラン本塁打を許した。つづくアスドルバル・カブレラにも中前ヒットを打たれたところで、ヒンチはハリスをあきらめ、ロベルト・オスナをマウンドに送った。