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長い試合時間と新ルールの提案。
MLB、「打者最低3人」案に物議続出。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/01/04 08:00
2019年10月、エンゼルスの監督に就任したジョー・マドン。カブスを108年ぶりのワールドシリーズ制覇に導いた知将は新ルールに大反対。
新ルールでは、この交代が許されない。
妥当な判断だろう。
ところが、マンフレッドの提案した新ルールのもとでは、この交代が許されない。明らかに不調のハリスが、つぎの打者とも対戦しなければならなくなるのだ。こちらのほうが、よほど興を削がれるのではないだろうか。
そもそも、打者限定のショート・リリーフは、そんなに試合時間を食うものなのだろうか。小間切れが積み重なればそうなるかもしれないが、試合時間が延びている要因は、もっと別の部分にもあるのではないか。
たとえばFanGraphsなど、MLBのデータに詳しいサイトを見ると、近年、「投球の間(ま)」がかなり延びていることに気づかされる。
2009年に平均22.0秒だった間隔が、2019年には24.9秒に延びているのだ。1試合の投球数が、両軍合わせて300球前後とすると(2.9秒×300=870秒)、15分近い遅延に結びつく。
サイン盗みに対して神経質に。
投球の間が長い投手は、たしかに何人か思いつく。
レイズのホゼ・アルバラードや、ドジャースのケンリー・ジャンセンなどが代表格だが、アストロズのザック・グリンキーやパドレスのカービー・イェーツなども、間が長い。30秒以上間を空ける投手の数は、年々増えつづけている。
最大の理由は、サイン盗みに対して投手側が神経質になっていることだろう。投球術が複雑になり、つぎになにを投げるかという処方に時間がかかっているという指摘もある。
しかし――。繰り返すようだが、リリーフに関するこの提案は、監督の戦略にまで関わってくる。
ロースターの数を25人から26人にするとか、IL(負傷者リスト)に入れられた選手は最低15日休まなければならないようにする(現在は最低10日)とかいったルール変更と同次元に置くのは、やはりむずかしいのではないか。