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西武の原動力は山賊打線のみならず。
日本一へ期待高まる金子侑司の“脚”。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2019/12/26 11:40
金子は今季41盗塁で3年ぶり2度目の盗塁王に。リーグ屈指の広い守備範囲でリーグ連覇に貢献した。
「脚」で引っ張った金子侑司。
外野守備・走塁コーチの佐藤友亮も証言する。
「チーム全体として走塁への意識は年々、高くなっていると思いますよ。だからこそ、得点数2位のチームとの差があれだけ離れる(西武の総得点756に対し、2位の千葉ロッテは642)。ホームランの数だけでは、これほど差が出ないでしょう。もちろん、チーム内にはいろいろな走塁レベルの選手がいます。でも、それぞれが、それぞれのレベルでランクアップしてほしいと話をしてきました。誰かがレベルアップすれば、その選手に引っ張られて皆がよくなっていく。もちろん今シーズンも全体でレベルアップできたと思います」
走塁面で中心となってチームをけん引してきたのが盗塁王に輝いた金子だ。開幕当初は1番に据えられたものの、シーズン中は打撃不振に苦しむ時期もあった。
佐藤コーチは続ける。
「1番を打つようになって、でも出塁できない時期は相当、苦しかったと思いますよ。でも、そんな中でも切り替えてプレーできていました。波が少なくなりましたよね。2018年シーズンまでは精神的なムラがけっこうあって、打席での結果を引きずることも多かった。でもバッティング、守備、走塁と、『ひとつひとつのプレーをリセットしてやっていきなさい』というアドバイスを実現してくれました。走攻守で助けてくれたし、今シーズンの金子のチームへの貢献度はとても高かったと思います」
その結果、3年ぶり二度目の盗塁タイトルを獲得した。
不調だった5月に盗塁10個。
金子は振り返る。
「今年はシーズンが始まる前から佐藤コーチと話をして、まずは内容がある盗塁を積み重ねていこうと決めました。チームが走ってほしい場面、自分が走りたい場面、動いたほうがチームのためになる場面で、しっかりスタートを切れるよう心掛けていました。盗塁に関しては、今までで、いちばん内容のあるシーズンだったと思います」
大きかったのは佐藤コーチが振り返る「気持ちのリセット」の部分である。
「まずはシーズンが始まる前に、しっかりスタートを切れるだけの根拠と自信が持てる準備をしました。その上で、塁に出たら出たで、そのときの感覚もあるので、自分の感覚も大事にします。準備と感覚が一致して『思い切っていける』と思ったら、思い切ってスタートを切ることが大事。
今年は打席で結果が出ない時期も、それが走塁には影響しなかった。ヒットが出ず、いちばんしんどかったのが5月だったと思うんですが、5月には10個走っています。塁に出たら別やし、守備についたら別やしって、毎試合『打てなくても他で貢献したい』と心がけてきた結果だと思います」