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過去16年でラグビー部員は3割減。
W杯フィーバーはどこまで効くか。
text by
八木葱Negi Yagi
photograph byGetty Images
posted2019/12/23 18:00
日本開催のラグビーW杯は文字通り全国中が盛り上がった。だからこそ今、競技の草の根の部分についてしっかりと考えたい。
人が減った部活、増えた部活。
もう少し数字を細かく見てみよう。
現在部員数の確保に成功している部活を見ると、陸上、水泳、登山、卓球、バドミントン、など個人競技や少人数の種目が目立つ。団体球技で増えているのはサッカーとハンドボールくらいだ。
バスケットやバレーは少子化を考えれば善戦しているがそれでも微減、ラグビーは前述の通り30%以上の減り幅を記録している。部員減少が話題になる野球ですら同じ期間では7%しか減っていないので、ラグビーの深刻さがわかる。
さらに苦しんでいるのは柔道やボクシングで、こちらは半減の勢い。弓道がさほど減っていないことを考えると、やはりフィジカルコンタクトが強い競技が嫌われている傾向がありそうだ。
ラグビーの激しいフィジカルコンタクト、1チーム15人という大人数での連帯責任、個人よりも集団を尊重するチームスピリット。そのすべてがラグビー固有の魅力であると同時に、個人主義が進む時代の空気とは乖離が大きい。
むしろ「滅びつつある古き良き集団主義」をラグビーの中に見た人が多かったからこそ、人気がここまで爆発したのでは、と言ったら言い過ぎだろうか。
競争相手は、全てのジャンル。
だから今こそラグビー界には魅力を伝える普及活動が必要だという結論は正しいが、それで問題が解決するともちょっと思えない。
いまや野球やサッカーのような人気競技ですら競技人口の確保に本腰を入れており、ラグビーだってずっと競技者を増やすための行動を続けてきたはずだ。
マルチスポーツが一般的ではない日本において、中高生の奪い合いはゼロサムゲームである。単純にラグビー業界が頑張れば部員が増えるというものではない。
他のスポーツはもちろんのこと、囲碁将棋、eスポーツにプログラミング、美術から音楽から起業まで、全てのジャンルと争って人の興味と時間を奪いとる形でしか、ラグビー人口は増えない。
普及活動を地道に続けていく、ジャパンやトップリーグの観客を増やす、高校や大学の大会をPRする。どれも必要で重要なことだが、それでラグビーの競技人口が激増すると考えるのはさすがに楽観的すぎるというものだ。