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200億円の補強資金よりも頼もしい、
ランパードのチェルシー育成哲学。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2019/12/17 11:40

200億円の補強資金よりも頼もしい、ランパードのチェルシー育成哲学。<Number Web> photograph by Getty Images

エイブラハムらの成長を促したランパード監督。新生チェルシーの長期プランは実を結ぶのだろうか。

1億ユーロでサンチョを獲るとの噂。

 チェルシーの冬の補強というと、今でも8年前のフェルナンド・トーレス獲得を思い出す。

 当時、英国史上最高額の移籍金5000万ポンド(約70億円)で迎え入れた新FWが不発に終わると、カルロ・アンチェロッティはその責任を取る格好で2冠達成の翌年だったにもかかわらず最終節当日にクビを告げられている。

 ランパード自身は補強について「チームをより良くできるのなら検討する」とコメントしている。ではサンチョを獲る必要があるのか? 筆者は「そうは思えない」と答える。

 ハドソン・オドイはアキレス腱の怪我から復帰後、まだ本調子ではないが年齢もタイプも近い。最大のスター候補生と見られてきたオドイには、移籍によるベンチ脱出を考えた過去もあり、現状のチーム内競争を通して成長を促すのが妥当と考えられる。

 競争相手の1人が、21歳のクリスティアン・プリシッチだ。プレミア初挑戦のアメリカ代表MFは、ここまでリーグ戦13試合出場で5得点2アシストと力を発揮し始めている。

 また移籍7年目の31歳、ウィリアンも忘れてはならない。ベテランのブラジル人は、攻守に足を止めない姿勢も、瞬時に放つシュートやクロスも、スペースを生む緩急も相変わらずの能力だ。

 今季CLでグループステージ突破を決めたリール戦(2-1)でも精力的にフル出場。エイブラハムの先制点アシストを含め、誰よりも多く好機を作り出していた。ウインガーに予算を割くつもりならば、今季末に満了するウィリアンの契約を延長しても良いだろう。

補強すべきエリアは左SBだ。

 移籍市場で動くなら、対象とすべき補強エリアは左SBだ。リーグでの24失点は、16節終了時点でのトップ6でワースト。CLでもグループHでの6試合で9失点している。ランパードは1点差まで詰め寄られたリール戦後、「ナーバスな終盤」に関する質問への回答に「ちょっと飽きてきた」と言って苦笑していたのだが。

 リール戦ではCBアントニオ・ルディガーが怪我から復帰。約3カ月ぶり、今季2試合目のピッチに立った。最終ラインの中央は今月で22歳のトモリが最年少で、アンドレアス・クリステンセンとクルト・ズマも25歳以下。26歳で守備のリーダー格に成長したルディガーの復帰は大きなプラス材料だ。

 右SBを見てもジェイムズが、キャプテンマークを巻く古株のセサル・アスピリクエタを手本に堅守の心得を学びつつある。いざベンチを出ればスピードに乗ったクロスなど、攻撃面では先輩を上回る能力をアピールしている。

【次ページ】 現実的なのはチェルシーにいた……。

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