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カープ育成入団から1年で支配下に。
強力外野陣に挑む大盛穂の思考力。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2019/12/11 18:00

カープ育成入団から1年で支配下に。強力外野陣に挑む大盛穂の思考力。<Number Web> photograph by Kyodo News

2018年ドラフトで育成選手として入団した大盛穂(最後列一番右)。1年目から二軍で結果を出し、支配下登録を掴んだ。

チーム最多の109試合出場。

 ただ、来季の広島外野陣の中で一軍で試合に出るためには一芸があっても厳しい競争が待っている。

 レギュラー陣には平均以上の打撃が求められ、プラスアルファの色が求められる。走力なのか、守備なのか、パワーなのか、それとも経験か。今の時代に求められる「イノベーション」は、プロ野球界でのし上がるためにも必要なことなのかもしれない。

 大盛には足という武器がある。広島野球に欠かせない要素で、1年目からファームでチーム最多109試合に出場することもできた。

 足だけで積み重ねた数字ではない。5月6日までは打率1割台に低迷していた。

「苦手なコースを徹底的に突かれて、意識していたら打てていたところも打てなくなっていった」

 決してレベルが高いといえない大学時代から一気にランクアップしたプロの壁は想像よりも高かった。

 乗り越えるために、考え、練習し、乗り越えてきた。大野練習場の場長は、毎晩のようにバットを振り込む大盛の姿を見ていた。

大盛はいわば「考える足」である。

 アマチュア時代もそうだった。飛龍高から静岡産業大学へ進学した。チームは決して強くなかったが、野球に対しての貪欲さを失ったことはない。静岡産業大では、監督交代もあって、主将となった大学4年時に監督代わりを務めた。

 チーム状況や長所と短所、時期などを合わせて必要なものを考え、練習メニューを組んできた。自然と周囲を見て冷静に判断する能力が備わり、自分自身もより客観視できるようになった。

 哲学者ブレーズ・パスカルは『パンセ』の中で「人間は考える葦である」という言葉を残した。「人間は、自然のうちで最も弱い1本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である」と。人間の自然の中における存在としてのか弱さと、思考する存在としての偉大さを言い表したものだ。

 大盛はいわば「考える足」。まだ広島球団だけでなく、プロ野球界でか弱い存在に過ぎない。だが、考える力を育んできた。考える力が備わっている人は、前に進める。思考力は行動力と比例する。

 信念を曲げず「強い気持ち」で取り組んできたからこそ、道が開けた。大学からの進路がすぐに決まったわけじゃない。社会人野球へ進もうにも、セレクションを兼ねた練習会参加を重ねても内定をもらうことができなかった。わずかな可能性にかけたプロ志望届で開けた道を自ら切り開いてきた。

【次ページ】 まだ、体の線は細い。でも……。

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