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“目先”の世論に屈しないドイツ代表。
EUROの結果より大事な、足掛かり。 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byUniphoto Press

posted2019/11/27 19:00

“目先”の世論に屈しないドイツ代表。EUROの結果より大事な、足掛かり。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

2014年の栄光から5年、立て直し期間が続くドイツ代表。果たして2020年の欧州選手権で復権なるか。

'00年代前半にあった大失敗。

 現在地を把握したうえで目標をどこに設定するのか。

 これは今後のドイツサッカー界の動向にも関係してくる非常に大事なポイントだ。自分たちの現在位置を見誤り、高すぎる目標を設定すると大きな足枷になってしまうことがある。ドイツには、大きな失敗をした過去があるではないか。

 2000年欧州選手権でグループリーグ敗退という失態を演じた後、ドイツサッカー協会は自分たちのプレースタイルを含め、育成から普及に至るまで抜本的改革に乗り出そうとした。

 あらゆるサッカー関係者がその必要性を認めていた。だが、いざ大会が近付いてくるとどうしても目の前の結果にすがろうとしてしまう。

 確かに、2002年の日韓W杯でドイツはバラックとカーンという大黒柱の活躍もあり準優勝を果たした。どこの国でもできることではない。さすがの底力だ。しかし下馬評以上の素晴らしい成績を手にした反面、どんなビジョンで、何のために、どんなメンバーで大会に臨むのか、という明確な線引きがないまま臨んだことが、その後の方向性を迷わせる要因となってしまった。

1大会のみ好成績、では意味がない。

 戦術も、戦略も、選手選考もどこか中途半端になり、2004年の欧州選手権では、またもグループリーグ敗退。同グループ最下位となったラトビアにも勝てなかった。

 ただ1大会で好成績をあげることが、そのままその国におけるサッカーレベルの安定・向上と同じ意味になるわけではない。

 W杯も欧州選手権も短期集中開催の大会だ。最大限の準備をし、最高のパフォーマンスを出せるよう取り組まなければならないのは当然だが、何かの拍子でリズムが狂い、それを取り戻すことができないまま大会から去るケースは充分起こりうるし、その逆もしかりだ。

 だが、取り組みに明確なビジョンがなく、さらに結果が出なかったら、そこには何も残らない。

 ドイツ代表チームマネージャーのオリバー・ビアホフは「また世界の頂点に返り咲く」ことを自分たちの目標に掲げている。だからこそ今回の欧州選手権ではドイツサッカーにとっての今後の道標を作り出すことが、結果以上に重要になってくる。

【次ページ】 エース候補ニャブリから漂う自信。

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