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“目先”の世論に屈しないドイツ代表。
EUROの結果より大事な、足掛かり。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/27 19:00
2014年の栄光から5年、立て直し期間が続くドイツ代表。果たして2020年の欧州選手権で復権なるか。
満員ではない会場とクロースの言葉。
そんなドイツ代表の現在地をファンはどのように受け止めているのだろうか。観客数はメンヘングラッドバッハ(ベラルーシ戦)では3万3164人、フランクフルト(北アイルランド戦)では4万2855人。いずれの試合も満員にはなっていない。
そのことを否定的に捉えたり、超満員のスタジアムで試合を行なっているイングランドと比較したりする識者もいる。しかし、確かな動きは出てきている。すべてが一気にうまく回り出したりはしない。
中盤でチームの心臓としての働きを担うクロースは、このように話していた。
「そこまで問題視する必要はないと思う。今日のスタジアムの雰囲気からはとてもポジティブな気持ちを受けているよ。試合をしながら幸せで満足な気持ちでプレーできていた。W杯の後、僕らは多くのものを取り戻すために戦ってきている。今はそのプロセスの中にいる。スタジアムに行くかどうかはそれぞれが決断すること。
でも、スタジアムが満員じゃないから僕たちのプレーが悪いというわけではないと思う。それに、10年前の代表のプレーが今よりずっと魅力的だったというわけでもないと思う。みんながまたスタジアムに足を運んでくれて、がっかりしないように全力で頑張っていくだけだよ」
常勝を求める世論にブレーキを。
スタジアムには、間違いなくポジティブな雰囲気が戻ってきている。
それでは、現在のドイツ代表にはタイトル争いができるだけの力があるのか――。
テレビ解説者や元ドイツ代表選手は「ドイツ代表は、いかなる事態にあっても大会ともなれば優勝を目指すだけのチームを送りこまなければならない」と圧力をかける。もちろん誰だってビッグトーナメントでは頂点を夢見たいし、そこを目指すチームを応援したい。そんな心情は理解できる。
だが、レーブ監督はそうした世論にブレーキをかけている。若返りに手応えを感じつつ、まだ優勝争いに食い込めるだけのレベルにはきていないと感じているようで「現段階ではイングランド、オランダ、スペイン、フランス、ポルトガル、ベルギーは、我々より先をいっている」と冷静に分析している。