話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
山口蛍が永井謙佑と共に変えた流れ。
代表に必要な能力と、本人の違和感。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2019/11/22 18:00
代表での自分の立ち位置、という難問は山口蛍にとって未だ解決されていない。それでも貴重な選手であるはずなのだが……。
「僕が入ってから前からいくように」
そして、山口の出番である。
「0-4と負けている状況だったんで、前からいくのが当然だと思うし、そこを一番に考えていました。僕が入った時点から前からいくようになって、後ろもそれについてラインを押し上げてきてくれた。
それでリズムが出て、セカンドボールもうまく回収することができた。前半からそれができていればって思ったけど、失点が立て続けにあったんでそういう風にならなかった。ただ、途中から入った選手はうまく切り替えてやれていたんじゃないかなと思います」
相手の動きが落ちたこともあったが、山口はチームのリズムが大きく変わった手応えを感じた。べネズエラを押し込む時間が増え、チャンスが増えた。前半にべネズエラが見せていたパス回しを日本が披露するようになり、形勢は逆転した。
そして後半24分、山口のミドルが決まった。追い上げムードを加速させるゴールに、スタジアムはこの日一番の盛り上がりを見せた。
「相手に当たって入ったんでラッキーでした」
反撃の狼煙を上げるゴールだったが、そこから2点目、3点目と相手にプレッシャーと恐怖心を与えることはできなかった。
とはいえ前半は、ミドルシュート自体1本もなかった。ラストパスでミスが多く、シュートにつなげることさえできていなかったのだ。
山口は永井とともにその流れを変え、ゴールを決めた。得点力があり、チームを修正できる力を持つ選手の存在は、今回のように代表経験が少ない選手が多いチームには欠かせない。
代表とクラブで違うポジション。
敗れたとはいえ、確かな存在感を示した。
しかし、山口の表情は硬かった。代表でのプレーに、まだ違和感のようなものを感じているのだろうか。そう思ったのは10月、日本代表について話をした時、山口がこんなことを言っていたからだ。
「(クラブでは)ボランチで出ていないから。代表で1つ前のポジションはないと思うし、呼ばれるとしたらボランチだと思うんで。インサイドハーフをやっている状態で呼ばれてもギャップじゃないけど、それはちょっと失礼というのもあるんで、今はチームに集中してやっていこうかなと思います」