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広島一筋25年の新一軍打撃コーチ。
「生きて死ねるか」で立て直す。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byNanae Suzuki

posted2019/11/11 19:00

広島一筋25年の新一軍打撃コーチ。「生きて死ねるか」で立て直す。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

4連覇を逃し、3連覇を支えた菊池涼介がメジャー挑戦を表明。朝山コーチは過渡期にあるチームを作り直せるか。

28歳で現役を引退。

 28歳で現役を引退した。現役時代を知る者の多くが高い打撃技術を認める。

 ただ当時の広島一軍には前田智徳、金本知憲、緒方孝市が外野のレギュラーを張っていた。浅井樹や町田公二郎などが代打の切り札として控えるなど、外野陣の層が厚かった。さらに度重なるケガでチャンスを逃し、引退を早めたのもケガだった。若くして指導者への道を進むことになった。

 二軍では打撃コーチだけでなく、外野守備走塁コーチも歴任した。

「早くからコーチをやらせてもらって、いろんな監督、コーチの方と接点を持たせてもらい、いろんな教え方を見てきた。どのコーチも求めるものは最終的には同じなんですけど、その過程が違うだけ。だから、誰にどの指導法が合うかは分からない。

 もちろん自分の考えはありますけど、1つのやり方を押し付けようとは思わない。選手に合うか合わないか(が大事)。合わないようだったら、こっちでいってみようとか」

ある意味色を持たない。

 個性や揺るぎない打撃論を持つ指導者もいるが、朝山はある意味色を持たない。選手の色に合わせた指導ができる。選手に寄り添うことができる。これまで会沢翼や丸佳浩(巨人)、鈴木誠也らの打者としての基盤づくりを支えた。

 入団から25年、広島一筋で球団の伝統を知る。冒頭の「生きて死ねるか」も、つなぎの広島野球を表すような言葉でもある。石井元打撃コーチがつくり上げた攻撃陣と同じように、派手さはなくても手堅い攻撃を目指していく。

「今の野球は5点差あっても分からない。“取れるときに取っておく精神”を持っていないとやられる」

 野球は変わりつつある。'14年、完封勝利がセ・パで計46回だったのに対し、今年は計27回に減ったようにロースコアの試合が少なくなった。一方で逆転試合が目立ち、5点差の逆転試合は'14年から5、6、8、10、14、11と増えている。3点差はもはやセーフティーリードではなくなってきている。

【次ページ】 「フライボール革命」への見解。

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