炎の一筆入魂BACK NUMBER
広島一筋25年の新一軍打撃コーチ。
「生きて死ねるか」で立て直す。
posted2019/11/11 19:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Nanae Suzuki
「生きて死ねるか――」
選手への強烈なメッセージは、新たに広島の一軍打撃コーチに就任した朝山東洋の所信表明のようでもあった。
15年務めた二軍コーチから、一軍担当となった。育成に重きが置かれた二軍とは違い、一軍では結果、勝利が求められる。同じ打撃担当でも求められるものが違う。
「アウトのなり方が大事。“生きて死ねるか”。ひとつでも(走者を)先に進める。あっさりした打席を減らすのは全員に当てはまる」
実戦的な打撃やチーム方針の浸透は来春キャンプから本格化させる考え。11月2日から始まっている日南秋季キャンプでは控え組、若手の底上げを目指してバットを振らせている。
微調整をさせる技術。
同じような考えを広島ナインに求めたコーチがいた。今秋から巨人一軍の野手総合コーチに就任した石井琢朗だ。内野守備走塁コーチから打撃に担当を変えた2015年秋に広島攻撃陣の意識を変えた。
「打線は水ものと言われる通りだと思う。打てないときにいかに点を取るか」
追い込まれてからの粘りを求めた。ベテラン新井貴浩の献身的な姿勢もあり、つなぎの攻撃はチームに浸透。得点力を飛躍的に上げ、3連覇した攻撃陣の礎となった。
25年ぶり優勝の'16年から広島は、選手、コーチが入れ替わり、チーム内で世代交代も起きている。3連覇を経て今年は4年ぶりにBクラスに終わり、監督も代わった。チームは過渡期を迎えている。
新陳代謝が求められる新体制で攻撃力向上の鍵を握るのが、朝山新打撃コーチだ。二軍でともに指導者として過ごしたこともある佐々岡真司新監督に招かれるように、一軍担当となった。若手の育成だけでなく、一軍選手のメンテナンスとも言える微調整をさせる技術にも長けており、選手からの人望も厚い。