マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト後は“答え合わせ”の時期。
スカウトが唸る「獲っとけば……」。
posted2019/11/12 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
社会人野球の「日本選手権」という大会は、夏の「都市対抗野球」ほど大きく報道されないが、補強選手なしの単独チームの“実力日本一”を決定する大会として興味深い。
そしてさらに興味深いのは、開催されるのがドラフト直後の10月下旬からなので、指名されたばかりの選手が何人も登場して、あらためて自らの技量を披露することだ。
さらには、来季を視野に入れて、都市対抗まではあまり出場機会のなかった若手選手が、「実戦研修」的な意味合いで起用され、「おお、そういえばこの選手この会社に入ってたなぁ……」と思わぬ再会に心躍ることもあって、私にはいろいろな楽しみの多い大会でもある。
この大会、社会人野球の2番目に大きな大会にしては、ネット裏にプロ野球関係者の数は多くない。
時期的に、ドラフトで指名した選手への「指名あいさつ」や「入団交渉」が重なるせいだ。
指名選手の担当がないスカウトや、地元・関西に居住するスカウトが、各球団1人かせいぜい2人。ネット裏に詰めて、選手たちのプレーに目を凝らす。
日本生命、高橋を見つめるスカウト。
大会8日目・第1試合、日本生命・高橋拓已投手(25歳、176cm75kg・左投左打・桐蔭横浜大)のピッチングをジッと見詰めるスカウトがいた。
「大学の頃から見ています。毎年“候補”に上がっていて、今年のドラフトでもウチのリストに入ってたピッチャーなんで」
この日、高橋投手の左腕は冴えていた。
134、5キロの速球にJR九州打線が振り遅れてファールを重ねて追い込まれ、スライダー、チェンジアップはなんとかカットするものの、最後は137、8キロの速球で空振りの三振を奪われる。
そんなパターンで、JR九州打線を6回まで無失点。ピシャリと抑え込んでいた。