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泰然自若の堀江翔太が完敗を認めた。
南アは「レベルが全然違いました」。
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph byAtushi Kondo
posted2019/11/08 17:00
南アフリカ戦の2日後、取材に応じてくれた堀江、稲垣、福岡の3選手。稲垣選手はカメラを向けると、やっぱり笑わない。
堀江翔太の言葉はいつも本音である。
堀江翔太のインタビュー記事の担当編集者として、彼と初めて会ったのは2015年6月。当時の髪の長さは耳にかからない程度で、今のようなゴリゴリのドレッドヘアーではなかった。
3カ月後に迫った2015年W杯初戦の相手である南アフリカのスクラムについて聞くと、なんのてらいもなく、言い切った。
「あれくらいやったら、押せますよ」
あの時は正直、またまたー、強気ですねー、と思った。
しかし2015年9月19日、イギリス・ブライトンの地で、日本のFWは世界一大柄な南アフリカ相手に、スクラムにおいて決して組み負けなかった。あの時の堀江のコメントは、強がりでも、見栄を張ったわけでもなく、本音だったんだ、と思い直した。
その後、2016年11月のウェールズ遠征の際にも話を聞いたし、サンウルブズに関連しても何度もインタビュー取材する機会に恵まれた。そして気付いた。堀江はいつも真っ直ぐで泰然自若、一切のブレがないのだ。
同級生でもある妻の友加里さんも、こう言っていた。
「翔太くんは裏表がないというか、人によって接する態度や言葉を変えたりしないんです。そういうところは小学生の頃のままかな」
「これが上に行くやつらのラグビーなんやなって」
2019年10月20日の南アフリカ戦、前半を3-5で折り返した時点で、「もしかしたら、これはいけるかも!」と、ものすごくポジティブな自分が記者席にいた。
しかし後半。日本は南アフリカの圧力に屈し、反則を重ねてはペナルティゴールで点差をあけられ、ブレイクダウン(ボール争奪局面)では蹂躙され、スクラムは完全にめくられた。
無残な敗戦ではあった。でも、「もしかしたら、なんとかなったんじゃないか?」という諦めきれない思いが、試合後に編集部へと戻る道中でわきあがってきた。
これは堀江に聞くしかない。堀江なら納得できる答えをくれるはず。彼はこう言った。
「レベルが全然違いました。4年前とも、大会前に熊谷でやった時とも。熊谷での試合、ぼくは出てないんですけど、出てたガッキー(稲垣啓太)も『比べ物にならないくらい強い』って言ってましたから。正直、アイルランドやスコットランドとは比較にならないほど強かった。ああ、これが上に行くやつらのラグビーなんやなって」
堀江がこういうのだから間違いない。ようやく完敗を受け入れることができた瞬間だった。