マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ドラフト後は“答え合わせ”の時期。
スカウトが唸る「獲っとけば……」。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/11/12 11:30
日本の野球界で、注目度と重要度が最も離れている大会の1つが社会人野球の日本選手権だろう。
「うわー! 獲っとけばよかったかなー!」
「うわー! 獲っとけばよかったかなー!」
スカウトがのけぞって笑った。
「ただねぇ、こんなことも考えるんです」
座り直して、続ける。
「プロで一軍となると、今のテクニックを維持したまま、あと5キロ欲しい。その“上乗せ”が、これからの高橋に可能かどうか……その見極め。彼も、来年26歳になりますからね。
それと、それ以上に考えてしまうのが、そんなギリギリの勝負かけるより、せっかく日本生命みたいな大きな会社にいるんだから、そのまま安定した環境で野球を続けるのも人生なんじゃないかなぁ、とかね」
私たち、ただボンヤリ、野球見てるわけじゃないんですよ……。
わかってますよぉ、そんなこと。
いまは「答え合わせ」の時期。
ドラフトが終わって、まだその余韻がはっきり残っているこの時期。それは、現場のスカウトたちにとっても、「答え合わせ」の時期なのかもしれない。
今年のドラフト会議で指名された社会人野球選手は14人。
そのうち、投手が10人で、野手は8つのポジションかき集めても、わずか4人。
この「日本選手権」に出場したドラフト1位指名選手は4人。
JFE西日本・河野竜生(投手、日本ハム1位)は日本製鉄鹿島を1点に抑えたが、東芝・宮川哲(投手、西武1位)はリリーフの2と2/3回で5安打2失点。
さらに野手で、JR西日本・佐藤直樹(外野手、ソフトバンク1位)はホンダの変化球左腕にタイミングが合わず1安打で初戦敗退し、優勝した大阪ガス・小深田大翔(内野手、楽天1位)は決勝までの5試合にシングルヒット5本を放った。
プロ野球が最上級の評価を下したそれぞれの選手の「ドラフトその後」を目の当たりにしたスカウトたちの心情は、果たしてどのようなものだったのだろうか。