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広島と青山敏弘から感じた“活力”。
J1制覇が遠のいても前向きな理由。
 

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原山裕平

原山裕平Yuhei Harayama

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photograph byGetty Images

posted2019/11/06 11:30

広島と青山敏弘から感じた“活力”。J1制覇が遠のいても前向きな理由。<Number Web> photograph by Getty Images

今季は長期離脱を強いられた青山敏弘だったが、やはりまだまだサンフレッチェにはなくてはならない存在だ。

原点回帰の3-4-2-1システム。

 思えば1年前、広島は悪夢の中にいた。開幕から9戦負けなしで首位を独走した昨季。しかし、シーズン終盤に“世紀の大失速”を演じてしまう。最後の9試合で1つも勝利を挙げられず(2分7敗)、川崎にタイトルを譲った。

 それは、個に依存するサッカーの限界と言えた。強固な守備ブロックを形成し、パトリックという強烈な前線のタレントを生かす戦いで結果を出してきた。しかしそのエースに対する警戒が強まると、得点パターンを失った。

 9試合でわずかに6得点。序盤の貯金を生かして最終的に2位と見栄えを保ったものの、新シーズンへの期待感は乏しかった。

 その反省を踏まえ、今季の広島はポゼッションスタイルへと舵を切る。システムも4-4-2から3-4-2-1へ変更。計3回の優勝を成し遂げた当時の布陣であり、いわば原点回帰とも言える方向転換だった。

 もっとも蓋を開けてみれば、守備に比重を置いたスタイルに大きな変化はなかった。開幕7戦無敗と結果を出したものの、内容は芳しくなく、その後に5連敗。昨季の悪夢がよぎった。

「チームとして大きく伸びた」

 それでも今季の広島はここからが違った。いい意味での開き直りがあったのかもしれない。どこか中途半端だったスタイル変更を徹底し、ポゼッション型のチームへと完全移行する。すると15節の湘南戦から11戦無敗と結果を出し、シーズン終盤まで優勝争いに踏みとどまった。

「結果的にここ2試合勝てなかったので、そこをどう捉えるかは難しいところだけど、チームとしてすごく大きく伸びたシーズンだったと思います」

 青山敏弘は、思いのほか晴れやかな表情だった。敗戦後、しかも優勝の可能性が事実上潰えたにもかかわらず前向きな言葉を発したのは、今のサッカーにやりがいと充実感があるからだろう。

「広島のサッカーはボールを握って、隙を狙っていく。相手が対策してきたなかでもそこを出せるようになってきた。今日だけじゃなく、チャンスは数多く作れている」

【次ページ】 柏と佐々木の存在、川辺・森島の台頭。

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