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広島と青山敏弘から感じた“活力”。
J1制覇が遠のいても前向きな理由。
posted2019/11/06 11:30
text by
原山裕平Yuhei Harayama
photograph by
Getty Images
タイムアップの笛が鳴った瞬間、ピッチに倒れ込んだのは、勝った川崎フロンターレの選手だった。先制しながら追いつかれるも、すぐさま勝ち越し、何とか逃げ切った。
試合を通じてボールを支配されながらも粘り強く耐え凌ぎ、最後のパワープレーも水際で跳ね返した。敗れれば3連覇の道が絶たれるなか、死力を尽くして微かな望みをつないだ執念の勝利だった。
一方、敗れたサンフレッチェ広島は、事実上の終戦となった。
「残された試合を考えれば、今日は勝点3を取らないといけないという想いをチーム全体で持っていた。我々は勝点3という結果を取れなかった。この悔しさ、この現実を受け入れなければいけないなと思います」
「内容は下を向くものではない」
11月2日、J1第30節の試合後、城福浩監督は悔しさを押し殺しながら声を絞り出した。その裏には、勝てた試合を落としたという想いが隠されていただろう。
「選手は今持てる力をすべて出してくれたと思いますし、内容は下を向くようなものではなかった」
指揮官の言葉は、決して強がりではないはずだ。試合の入り方にこそ不安を残したものの、その後は多くの時間帯でボールを支配した。2トップに変更し、前への圧力を強めた後半はハーフコートマッチの展開も作り出している。
ボールポゼッションは60%を超えた。追いかける展開のなかでこの数字にさしたる意味はないかもしれないが、21分に先制される前からも、広島がボールを握っていた。洗練されたパススタイルを形作る川崎を、これだけ押し込めるチームはそうはいないだろう。
「内容では上回っていた」
悔しさが募る一戦に、指揮官はこの言葉を飲み込んだように見えた。