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大隈重信とアメリカ大統領と始球式。
あの「空振り」は日本で始まった?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/10/31 19:00
2019年には錦織圭がカブス対カージナルス戦の始球式に登場したことも。
国家の首長で初の始球式は大隈重信。
公式戦では地元の慈善団体や戦場や被災地で支援活動をしている軍関係者、スポンサーや他競技の有名選手やコーチなどが行う始球式。英語では“Ceremonial First Pitch”と言う。
米国の首長=大統領で初めて始球式を行ったのは1910年のウイリアム・ハワード・タフト第27代大統領で、その場所は当然、ワシントン・セネターズの本拠地「ナショナル・パーク」だった(もちろん、現在の「ナショナルズ・パーク」とは違う)。
英語版Wikipediaに面白い記述がある。
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現職であるかないかを問わず、国家の首長が初めて始球式を行ったのは1908年11月22日の大隈重信元総理大臣(当時は早稲田大学総長)だったそうで、写真に残っている当時の新聞記事には、こう書かれている(直訳ではないのでご容赦を)。
『8000人以上の熱心な観客の前、大学のチームと対戦するためにやってきたアメリカの野球チームが、その開幕戦となる早稲田大学との午後の試合に5−0で勝利した。早稲田はきびきびとプレーしたが、二塁まで走者を送ることができなかった。
早稲田の総長である大隈伯爵は、アメリカ・チームの帽子とコートを着て、最初の球をトスしてプレートを通過させた。アメリカの選手たちは試合後、大隈伯爵邸でのパーティーに歓待される栄誉を受けた』
始球式の空振りはその時の配慮が発端。
日本語版Wikipediaにも、当時のことが紹介されている。
明治41年(1908年)11月22日に戸塚球場で開催された米大リーグ選抜チーム:リーチ・オール・アメリカンチーム対早稲田大学野球部の国際親善試合における大隈重信の始球式は日本野球史上、記録に残っている最古の始球式とされている。
ちなみに同サイトによると、大隈元総理の投球はストライクゾーンから大きく逸れたものの、ボールになっては失礼だと考えた早稲田の1番打者で当時の主将・山脇正治選手が意図的に空振りをしてストライクにしたことで、それ以降、打者が立って空振りする日本独特の始球式が確立されたそうだ(注:アメリカの始球式では打者が立たない)。