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マリノスは選手が抜けても変わらない。
「ポステコ号」はJ1制覇へ辿り着く?
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2019/10/24 08:00
ポステコグルーが掲げる攻撃サッカーが実り始めた横浜F・マリノス。首位鹿島アントラーズとの勝ち点差は1だ。
得点が増えて、失点が減った。
躍進ぶりは、数字にも表われている。
1試合平均得点は昨季1.647から今季1.862。
1試合平均失点は昨季1.647から今季1.172。
得点が増え、なにより失点が激減した。
その理由はひとつ。つなぎの精度が上がったからだ。
サッカーは表裏一体。攻撃でのミスが減れば、それだけ守りも安定する。
Jリーグの試合では、ハーフタイム明けになると報道陣に「コメントシート」が配られるが、ポステコグルー監督のハーフタイムコメントはだいたい同じだ。
いちばん多いのが「ボールをどんどん動かそう」。
次が「ボールを素早く動かそう」。
「ペナルティエリアに入る人数を増やそう」や「もっと相手を動かそう」というのもある。
これだけで指揮官の意図が手に取るようにわかる。ポステコグルーは結果と同時に内容も重視する監督だ。
四方八方から手が伸びる。
直近29節のホームゲームでは、失速する湘南との一戦ということもあって、多彩なパスワークが随所に見られた。
横浜は短いパスをテンポよくつなぎ、ボールのあるところに入れ代わり立ち代わり選手たちが顔を出す。
つまり、ボールと選手がよく動く。
書けばひと言、だが実践するのは至難の業。
少しでもパスのコースやタイミングがずれたりすれば、ボールは敵に渡り、手薄な後方が一気にピンチに見舞われる。対戦相手の多くはしっかりと網を張って、その瞬間を狙っているのだ。
だが湘南戦だけでなく、今季は逆襲からピンチを招くシーンが少ない。
「横浜版ティキタカ」といってもいい横浜のパスワークには、数多くの連係の形がある。
例えば右SB松原健が同サイドのタッチライン際にいるウイング仲川輝人にボールを預け、内側を駆け上がる。そしてペナルティエリア手前でステイ。右の仲川からトップ下のマルコス・ジュニオールにパスが渡ると、そこからフィニッシュをうかがい、逆サイドからはティーラトンも入ってくる。
選択肢がとても多く、四方八方からゴールに向かって手が伸びていく印象。2年間かけて培ってきた指揮官のサッカーを、だれもが共有していることがプレーに表われている。