ラグビーPRESSBACK NUMBER
涙も年齢も力の差も受け止めて。
田中史朗が若者に託す「もっと上」。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2019/10/22 19:00
田中史朗はいつだって真っ直ぐだ。苦言も涙も、その全てが彼の真実なのだ。
「日本ラグビーは一歩踏み出せた」
ラグビーW杯に出場するのは、2011年と'15年に続いて今回が3度目になる。'08年の日本代表デビューから積み上げてきたキャップ数は、10月20日の南アフリカ戦で「75」となった。今回のメンバーでは最多であり、日本代表史上5位となる。
キャップ数は日本のために戦った証であり、日本ラグビーに思いを巡らせてきた時間を示すものでもある。34歳のスクラムハーフは2019年のW杯という「点」ではなく、日本ラグビーを「線」でとらえることができる。
「今回のW杯で、日本ラグビーは一歩踏み出せたと思います。ホントに自分が思い描いていた日本のラグビー文化が根づく第一歩というのが、この僕たちのベスト8ということなので。
もうひとつ上に上がれればもっともっと良かったと思うんですけど、ホントにたくさんの人に応援していただいて、これからの子どもたちもそうですし、若い選手たちがこれからの日本を引っ張っていってくれれば、もっともっと日本に文化として根付いていきますし、もっともっと上を目ざせると思う」
ベスト8より「もっともっと上」とは、ベスト4でありファイナリストであり、世界一ということになる。ここから先は、一歩を踏み出すのがさらに難しくなっていく。
進むべき道は変わらない。
日本がプール戦で歴史的勝利をあげたアイルランドでさえ、W杯での最高成績はベスト8なのだ。スコットランドも、ベスト4以上は一度しかない。シックスネイションズと呼ばれる欧州6カ国対抗戦で優勝経験を持つ彼らにとっても、W杯のトップ4は高くそびえる壁なのだ。
「日本がやっていくことはこれからも変わらず、ハードワークをしないと絶対トップ8には勝てない。ハードワークすること、そのなかでもっとディティールをしっかりしていくことですね。やっぱりミスがあったり、自分の役割を間違ったりとかいうのが、ホントに少しずつあると思うので。
今回こうやって、日本も世界と戦えることを証明できたので、もっともっとひとりひとりが地力をつけて、ハードワークをして、世界に挑んでいきたいですね」