ラグビーPRESSBACK NUMBER
涙も年齢も力の差も受け止めて。
田中史朗が若者に託す「もっと上」。
posted2019/10/22 19:00
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
涙がとめどなくこぼれ落ちた。
ワールドカップでの戦いが、終わったからではない。スタジアムの空気が、ピッチから見上げる景色が、田中史朗の感情を激しく揺り動かしたのだった。
「長いこと代表でやってきて、どうですかね、次(のW杯出場が)があるかわからない、もしかしたらこれで最後なのかもっていう思いもありましたし、やっぱりたくさんの方に応援しに来ていただいたので。
自分がずっと2011年以降に思い描いていた光景が目の前に広がっていたので、試合に負けたことはすごく悲しかったですけど、ホントにこう日本ラグビーの幕開けじゃないですけど、日本ラグビーがここからまた進化していけるんだとファンの方を見ていて思ったので、それがこう、涙になって流れました」
「日本らしさを見せることはできたので」
南アフリカには力の差を見せつけられた。前半こそ3-5のクロスゲームへ持ち込めたが、時間の経過とともにスコアを広げられてしまった。
「負けて偉そうなことは言えないんですけど、南アフリカはすごくスマートなチームになっていました。4年前は力で僕たちをねじ伏せようっていうだけのチームだったのが、後半から戦術を変えてきて、ペナルティを取ってゴールを狙ってきたり。
勝ちにこだわるチームになっているなと。相手の底力というか、セットピースの部分で少しずつ押されてしまったところもありました」
田中は71分から出場した。流大との交代は5試合連続だが、ピッチに立つタイミングはこれまででもっとも遅かった。
「僕自身のプレーは3試合目までは良かったんですけど、スコットランド戦と今回の南アフリカ戦は……今回はあんまりチャンスがなかったというか、出場時間も短かったですし、試合が少し決まったような状態で出たので、自分の良さをアピールする部分は少なかったと思うんですが。まあでも日本らしさを見せることはできたので、チームとしては良かったと思います」