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伝説のヨットマン、最後の大勝負。
セールGPはヨットのF1になれるか。

posted2019/10/25 15:00

 
伝説のヨットマン、最後の大勝負。セールGPはヨットのF1になれるか。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

早福和彦(右)と笠谷勇希(左)。日本にヨットレースを観るという文化を根付かせる戦いが始まる。

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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Yuki Suenaga

「伝統」と「革新」。その摩擦によって、ヨットの世界で昨年、壮大なプロジェクトが始動した。「セールGP」、言うなれば、ヨット版F1である。

 セールGPは国別対抗ヨットレースで、スタート時の参加国は6カ国に絞られた。最初のシーズン、順位が上だった国から並べると、オーストラリア、日本、中国、イギリス、フランス、アメリカの6チームだ。ヨット強国か、あるいは、マーケティング戦略として重要だと判断された国々が選ばれた。

 日本チームのCOO(最高執行責任者)を務めるのは日本ヨット界のレジェンド、早福和彦だ。

「F1のように毎年、世界を転戦して年間チャンピオンを決める。今年は5戦でしたが、ゆくゆくは10戦まで広げる。こんな魅力的な話に飛びつかない手はないと思った」

 スペインを拠点に世界で戦い続けてきた早福は世界最高峰のヨットレース、アメリカズカップに5度の挑戦経験を持つ。おそらく今、国内で「プロセーラー」と呼べる存在は早福だけだろう。

アメリカズカップの最大のネック。

 ヨットマンなら誰しもが一度は見るだろう夢。それが原則4年に一度開催されるアメリカズカップだ。日本がまだ鎖国していた江戸時代、1851年に始まり、優勝者に与えられる銀杯は世界最古のスポーツトロフィーだと言われている。

 早福の5度目の挑戦は2016年から2017年にかけて、「ソフトバンク・チーム・ジャパン」のプレイングマネージャーとしてだった。4年後、もう一度、同じチームで挑戦するつもりでいたが、事はそうスムーズには運ばなかった。

「アメリカズカップの最大のネックは、優勝したチームが全部、ルールを変えられるという点なんです。なので大会が終わった後、1年から1年半くらい、今度は、いつ、どこで、どのようなレギュレーションで行われるかがわからない。

 なので、いったんチームは解散し、スポンサーもいなくなっちゃう。せっかくついたファンも離れちゃいますよね。先を見越してお世話になっていた企業の人に4年後のお願いにいっても、詳細が決まってからにしましょう、となる。そこが難しかった」

【次ページ】 ショービジネスとして成立していなかった。

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早福和彦

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