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4年連続無冠ガンバが立ち直るため、
宮本監督が残留争いで試されるもの。 

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下薗昌記

下薗昌記Masaki Shimozono

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posted2019/10/18 19:30

4年連続無冠ガンバが立ち直るため、宮本監督が残留争いで試されるもの。<Number Web> photograph by Getty Images

昨シーズンは不振にあえぐガンバを救った宮本恒靖監督。今季のターゲットは「残留」、この1つに絞られた。

評価すべき宮本監督の実績とは。

 残してきた成績だけで判断するならば、宮本監督に与えられる評価は「不合格」。だが、常勝軍団の復権だけでなく、世代交代への道筋をつけるという難しいミッションを託されたレジェンド監督は、5月に行われたセレッソ大阪とのダービーでプロ2年目の福田湧矢や高江麗央、大卒ルーキーの高尾瑠らを先発に抜擢するサプライズ布陣で勝ちきった。

 世代交代に関して一定の実績を残してきたのは、評価すべきポイントだ。

 ただ、宮本監督が見せてきた2年目のチーム作りは、未だその「顔」をはっきりと見せていないのも事実である。

 破竹の9連勝でJ2降格の危機からチームを救った昨季は、ファン・ウィジョの決定力を前面に押し出す手堅いサッカーを確立。4-4-2を基本に「奪って速く」というコンセプトは明確に打ち出されていたが、今季は未だにベストの布陣を見出しきれていないのが現実だ。

 戦力的に恵まれているとは言い難かったシーズン序盤とは異なり、7月には宇佐美とパトリックを獲得。その後も井手口陽介と元スペイン代表のマルケル・スサエタらがチームに加わり、戦力的には上位陣に引けを取らない陣容のガンバ大阪ではあるが、「相手や状況に応じて3バックと4バックを併用して行ければ」と理想を口にする指揮官が逆に袋小路に入り込んだ感が否めない。

課題は選手のマネージメント力。

 若き指揮官が抱える一番の課題は、やはり選手のマネージメント力である。

 今夏、ガンバ大阪からはクラブ史上例を見ない8人の選手が完全移籍、または期限付き移籍で新天地へと旅立った。

 欧州へ渡ったファン・ウィジョや中村敬斗、食野亮太郎に関しては不可抗力の流出ではあるが、疑問が残るのは今野泰幸やオ・ジェソク、米倉恒貴らベテラン勢の移籍である。

「シーズン途中の移籍なんて考えたこともなかったし、最後まで一緒にみんなと戦いたいという気持ちが強かった」とガンバ大阪での最後の囲み取材で、今野は複雑な胸の内をこう明かした。

 今野ら3人はいずれも2014年の栄冠を支えた「三冠戦士」。ガンバへの愛着も帰属意識も人一倍強いベテランたちがチームを離れたのは、やはり、そのマネージメントに問題があったからと言わざるを得ないのだ。

【次ページ】 ベテランへの手厚さがあれば。

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