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今、大きく感じる堀江翔太の言葉。
「準々決勝も勝って準決勝まで行く」
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/10/08 11:50
ラインアウトでスロワーを務める堀江は、ロシア戦でも安定したスローを見せた。この試合では、チーム最多の18タックルを決めた。
退場が2人にならず、幸運だった。
確かにロボッティは主犯格だったが、ボディスラムは、2プラトンで放たれていた。すべてのチームにとって退場者を出すことは不運であり悲劇のはずだが、この日のオシェイHCは極めて例外的な感想を口にした。
「退場が2人になっていた可能性があったことを思えば、幸運だった」
前半にプロップをふたり負傷で失い、FW戦で明らかな劣勢に立たされていたイタリアにとって、さらなるプロップの喪失はリカバーしきれない深手となった。修復に次ぐ修復で辛くも持ちこたえてきた決壊寸前のダム。あるいは表面張力だけで持ちこたえていたコップ。ロボッティの退場は、そこに加えられた最後の一撃、最後の一滴だったのだろう。
ひとりが、すべてを壊してしまった。
イタリア人に持ちこたえる術は、なかった。
鎧袖一触。刃こぼれなどするはずもなし。
持ちこたえさせるつもりが南アフリカにまったくなかった、というのもある。
勝敗の帰趨がはっきりしてからも、ボーナスポイント獲得となるこの試合4本目のトライを決めてからも、彼らはまったくペースを落とさなかった。ラストプレーを告げるホーンが鳴ってからも、さらなるトライを狙って試合を続けようとした。
ほとんど無慈悲と言ってもいいぐらいに。
「完璧ではないが、わたしたちの強さは出せたと思う」
南アフリカのエラスムスHCは事も無げに言った。鎧袖一触。刃こぼれなどするはずもなし。そんな余裕と自信を感じさせる会見だった。
問題は、かくも強力な南アフリカが、準々決勝で日本の前に立ちはだかるかもしれない、ということである。