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将棋は5歳、ランニングは4歳から。
ほぼ毎日走る信念の棋士、菅井竜也。
text by
寺島史彦(Number編集部)Fumihiko Terashima
photograph byAsami Enomoto
posted2019/10/05 08:00
撮影後に「走り足りないので、これから走りに行きます」と笑った菅井竜也七段。
「精神力って熱いイメージですけど」
岡山に住み続けること、振り飛車を指し続けること。その「信念」を貫く精神力に支えられて、彼は勝ち抜いてきた。では、「精神力」と聞かれて思い浮かべる棋士とは誰なのか。
「人によって違うとは思いますが、谷川(浩司)先生です。ほとんどの棋士は形勢が良い時も悪い時も、表情に出ます。羽生(善治)先生でもそう。でも谷川先生は、常に姿勢もピシッとしたまま。朝10時でも、夜の10時でも、勝つ時も、負ける時も、変わりません。
精神力って熱いイメージですけど、いつも優雅に将棋を指すというのは、並の精神力ではないと感じます。ただ、目標にはしたいですけど、自分には無理。自分のすぐカーッとなるスタイルから転向するのは現実的ではない。格好いい服を着たいけど、自分には合わないっていう感じですかね(笑)」
さて、今回撮影を行ったのは、彼の地元・岡山。カメラマンと筆者のリクエストに応え、ランニングウェアのまま、彼の象徴ともいえる「飛車」の駒を持ってもらうなど、かなり無茶をお願いした。
何往復も走ってもらったが、「まだまだいけますよ!」とメンタルだけでなく、ランニングで鍛えられた身体もかなりタフだ。棋士仲間と参加した「大阪城ナイトラン」以外にランイベントにも参加したことがないというが、これだけランを継続しているのであれば、レースへの出場を考えたことはないのか? と訊いてみた。
「いや、やっぱり自分はあくまで棋士ですから。将棋のために走っていることを忘れないようにしないと」
やはり、すべては将棋のためなのだ。