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いつまでも森さんに頼ってはいけない。
西武・今井達也を支えたメモの存在。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2019/10/03 11:40
試行錯誤しながらも、チームトップとなる12試合のクオリティスタートを記録。CSでも今井達也に寄せられる期待は大きい。
球種から打者の反応、精神状態まで。
「7月5日のロッテ戦からですね。バッターへの攻め方については試合前のミーティングでコーチを交えていろいろと話しますけど。全部が全部、『キャッチャーの森(友哉)さん任せでいいのかな』と自分自身に疑問を感じるようになって……。いつまでも森さんを頼ってはいけないと思ったのがきっかけです」
メモにはその日、投げたボールの球種や、それを見送った打者の反応。その日「いいボール」だと感じた変化球の種類と、そのときの感覚、体調、自分の精神状態などを詳細に書き込んだ。
「誰かに言われたからではなくて、自分で必要だと思って用意しました。今までは僕、自分のピッチング内容をあまり細かく覚えていないことが多くて……。試合が終わったあと、チームのデータを管理する人から映像をもらって、それを見返します。見ると思い出すんですけど、細かいところまで覚えきれていないこともあったので……」
すべての投球内容を詳細に記憶しているタイプのピッチャーも中には存在するが、今井は違った。
「だから細かいことを記憶しておくためにもメモを取ろうと思いました。試合中にカウントを取ったボールとか、決め球が最後にしっかり投げ切れたときは、そのときの体の感覚とか、精神状態を書くようにしています。そのときの球種、コースはどうだったか。抜けたボールなのか、それとも(腕を)しっかり振り切れても打たれたのか……。打線の2巡目、3巡目に生かせるようにしたかったので、迷ったときはイニング間にノートを見直します」
メモは、きっかけを探すため。
2019年シーズン、今井は投球モーションやフォームを頻繁に変えている。その様子からも試行錯誤を繰り返していることがうかがえた。
「このフォームで投げたときに、ストレートの球威はどうだったか、変化球のコントロールはどうだったかもメモします。自分のフォームや自分の精神状態は、自分でわかっていないと修正もできないと思うので……」
悩める21歳にとっては、きっかけを探すために試合の一場面一場面を思い出すことが必要だった。