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いつまでも森さんに頼ってはいけない。
西武・今井達也を支えたメモの存在。
posted2019/10/03 11:40
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
Kyodo News
埼玉西武ライオンズが2年連続23度目となるパ・リーグ制覇を果たした。
エース・菊池雄星をメジャー移籍で欠き、新戦力と期待されていた内海哲也は開幕前に故障で離脱。思えば昨シーズン、2桁勝利を挙げた多和田真三郎の不調や榎田大樹の故障も続き、先発ローテーションの頭数を揃えることすら危ういシーズンのスタートだった。首位から最大8.5ゲーム差離され、Aクラス入りも危ぶまれた2019年シーズン。なぜ終盤、追い上げ、逆転優勝にこぎつけることができたのか。
首位ソフトバンクを追う最中、辻発彦監督に話を聞くとこう語った。
「平井克典、増田達至という抑えがしっかり仕事をしていること。そして先発投手が崩れなくなったことが大きいですね。一時期、序盤に大量失点する試合が続きましたが、9月は先発が最小失点で5回、6回まで押さえ、勝ちパターンにつなげる試合が非常に多かった。やはり投手陣ですよ」
そして、こう続けた。
「今井(達也)に関しては本当なら、勝ち数と負け数が逆くらいの期待をしていたんですけどね。でも、やっと終盤に来て先発ローテーションを守ってくれるようになりました」
シーズン中も、今井についてはたびたび監督からは厳しい叱咤激励のコメントが聞かれたが、「それだけ期待しているから」と、辻監督は一貫して今井に対する評価のハードルを下げなかった。
安定しない今井が取り始めたメモ。
今井は昨シーズン、先発を任される試合も増え、5勝を挙げた。そして高卒3年目を迎える今季は「背番号と同じ11勝が目標」と開幕前から明言してきた。3月30日に今季初登板を果たすものの黒星スタート。その後、先発ローテーションを守りながら4月20日から5月5日までは3連勝を飾る。
しかし、なかなか安定した投球が続かない。5イニングス7失点の翌週には7イニング完封を見せるなど、良い日と悪い日が極端で、別人のような投球が続いた。
そんな中で迎えた7月、今井は試合中にメモを取るようになった。ビジターの試合ではベンチの隅で。メットライフドームで登板するときにはベンチ裏のロッカーにノートとボールペンを置き、イニング間に気づいたことを書きとめた。