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「俺よりも優れた指導者はいる」
広島一筋33年の緒方孝市監督が辞任。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2019/10/01 17:00

「俺よりも優れた指導者はいる」広島一筋33年の緒方孝市監督が辞任。<Number Web> photograph by Kyodo News

10月1日に開いた記者会見で「全力で最後までやり切ったなと。そういう思いでいます」と語った緒方監督。

菊池をベンチ外にした理由。

 7月8日の中日戦では、同じくコンディション不良を訴えていた菊池涼介をベンチメンバーから外した。ベンチ外の理由を緒方監督は「ベンチに置いていたら使ってしまうから」と指示したという。翌9日スタメンに復帰した菊池は「(前日のメンバー外は)想定外も想定外。でも1日休みをもらっただけで全然違う」と表情を変えていた。

 プロとして「甘い」という意見もあるかもしれない。ただ、限られた戦力を長いペナントレースで最大限に生かすための現実主義を貫いたまで。特に今年は3連覇した戦力から新井貴浩氏が引退し、FAで丸佳浩が巨人へ移籍。チームの総戦力のダウンはいなめなかっただけに、これ以上、主力が抜けると戦いに大きな影響を及ぼすことになる。

食材をそのまま生かす料理人。

 巨人には今季限りで現役を引退する阿部慎之助がケガを押してもグラウンドに立ち続けたように、今も坂本勇人らにも脈々と受け継がれる伝統がある。素晴らしい伝統であり、常勝球団であり続ける理由だろう。緒方監督が求める理想も同じ。

「俺らの時代はたとえ足を引きずりながらでも試合に出ることでレギュラーのプライドを示さなければいけなかった」

 ただ、今は違う。現実的に戦力が限られた広島が優勝争いするためには、現有戦力の維持は最低条件と捉え、現実路線を選んだ。

「時代が違う。そこでパフォーマンスが発揮できなければ、チームの力にもならない。ましてや今の選手の考え方も変わってきている」

 監督を料理人に例えると、緒方監督は与えられた食材をそのまま生かす料理人だったのではないだろうか。FAや大物外国人選手などの獲得で大きな戦力アップを望めない広島の指揮官として「与えられた戦力を最大限に発揮」させていた。明るい広島ベンチの雰囲気を容認し、ムードメーカーのポジションも大事にしていた。

【次ページ】 選手を信じて正攻法の戦い方を貫いた。

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