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「俺よりも優れた指導者はいる」
広島一筋33年の緒方孝市監督が辞任。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2019/10/01 17:00

「俺よりも優れた指導者はいる」広島一筋33年の緒方孝市監督が辞任。<Number Web> photograph by Kyodo News

10月1日に開いた記者会見で「全力で最後までやり切ったなと。そういう思いでいます」と語った緒方監督。

チーフトレーナーと激しい口論も。

 監督就任前年の2014年まで三軍でけが人のリハビリなどを担当していた松原慶直トレーナーは、緒方監督からの絶大の信頼もあり、彼の監督就任とともに一軍昇格。就任2年目からチーフトレーナーを務めた。

「(松原トレーナーは)俺と考え方が同じだから。一番難しい立場だと思う。こちらの考えを理解しながらも、選手の体を一番に思っている人。そういった狭間で苦しんでいる姿を何度も見てきた。ただ、そのポジションで責任を持ってやっているから、俺も信頼して考えを言える」

 試合前練習時、緒方監督の定位置は打撃ケージ裏ではなく、遊撃手や二塁手の後方だった。チームを俯瞰して見るだけでなく、トレーナー陣と意見交換することで、選手が首脳陣には口にできないコンディションを把握するためでもあった。

 松原チーフトレーナーとは、互いの思いがあるからぶつかることもある。昨季終盤には、グラウンド上で激しい口論を交わしたこともあった。

熱い思いをぶつけるから、伝わる。

「彼らにも責任を持ってやってもらうし、厳しいことも言わせてもらっている。その成果をずっと出してくれている」

 思いが強いから、熱くなる。熱い思いをぶつけるから、伝わる。伝えることで分かり合う。緒方監督と松原チーフトレーナーを中心に、選手の体調管理は徹底された。タイミングよく戦力が揃った陣容もあり、安定した戦いができた。今季もそうだった。

 正捕手会沢翼にコンディション不良が見られた6月には、大きく負け越していた時期でも思い切って休ませる決断をした。主戦大瀬良大地の登板間隔を中6日から中5日に詰めたのが8月下旬からだったのも、蓄積疲労を考慮してのものだった。

【次ページ】 菊池をベンチ外にした理由。

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