炎の一筆入魂BACK NUMBER
「俺よりも優れた指導者はいる」
広島一筋33年の緒方孝市監督が辞任。
posted2019/10/01 17:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Kyodo News
4連覇を逃し、4年ぶりBクラスに終わった広島の緒方孝市監督が辞任することが発表された。
チームを3連覇に導いても「優勝は選手の力」と言ってはばからなかった。絶大なカリスマ性があったわけではない。奇策を繰り出すような名将タイプでもなかった。もっとも過小評価された3連覇監督かもしれない。
だが、そんな周囲の声も「それは自分でもそう。俺よりも優れた監督はいるし、優れた指導者はいる」と穏やかな表情で受け入れる。
ただ、首脳陣、選手、裏方を三位一体で強固な組織につくりあげた指揮官だった。緒方監督は選手をたたえると同時に、裏方への信頼も口にしていた。
「陰でサポートしているトレーナー部の功績は大きい。そういった大きな力が3連覇できた要因でもあると思う」
長期離脱が少ないのは、偶然ではない。
日本球界の歴史的に、広島はアイシングの導入や水泳トレーニングなどトレーナー部門で先駆的な球団と言えるだろう。広島のトレーナー部門は緒方体制下でより強化された。
緒方政権の5年、プレー中のアクシデントによる長期離脱は極めて少なかった。偶然ではない。
監督就任とともに、選手の体を誰よりも知るメディカルトレーナー、コンディションを把握するアスレチックトレーナーの連係強化に着手した。
それまでトレーナー各部門はそれぞれが独立したような立場であり、意外にも情報などを共有できていなかった。そこを一本化し、指揮官もトレーナー部と密な連係を組んで強固な関係を築いていった。