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「敗れる怖さ」を知る阿部慎之助。
引退は巨人の伝統を引き継ぐために。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKYODO

posted2019/09/26 17:00

「敗れる怖さ」を知る阿部慎之助。引退は巨人の伝統を引き継ぐために。<Number Web> photograph by KYODO

9月25日、笑顔で引退会見を開いた巨人・阿部慎之助。

「納得できたという言葉を使った」

 この突然の引退の背景を阿部はこう説明した。9月21日に5年ぶりのリーグ優勝を飾り、原監督との話し合いは、翌22日の神宮球場でのヤクルト戦の前だったという。

 その中身は――。

「監督の意向をお聞きして、自分も同じことを思った。すごく僕の将来だったりを、僕が思っている以上に原監督が考えてくださった。そこで納得できたという言葉を使った」

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 それ以上の具体的な内容については口を閉ざした。それでもこれまでの経緯を考えると、近い将来に巨人の監督という青写真があるのは、誰もが想像する範囲のことでもある。

「今度は指導者として一緒に戦っていこう」

 あくまで想像だが、そんな言葉が監督から出て、阿部自身も決断したということだろう。

チームを動かすノウハウを学ぶ機会を。

 昨年の監督復帰直後から、原監督は勝つことの次に大きな使命として、次の指導者の育成を語ってきた。その中で松井秀喜さんや高橋由伸前監督、上原浩治さんらとともに「いずれはそういう立場にならなければならない人間」として阿部の名前も挙げている。

 その上で後継者の資格として、こんな条件も語っていた。

「まずは資質です。それからどういう風なものを求め、そのためにどうやって上がっていくのか。その部分を持っている人でないと、なかなか監督はできないと思う」

 要は「監督になる」という強い意志を持ち、その目標に向かって私情を捨てて「監督学」を学び、1歩ずつ階段を上がっていく。それをやり切る意志のある人物だけが、次の監督への切符を手にできるし、その心構えで準備をできなければ監督としては成功できないということだ。

 そのためには自分がヘッドコーチ時代に長嶋茂雄監督がやってくれたように、采配や用兵、またチームを動かすノウハウを学ぶ機会と時間を、その後継者にも用意する。

【次ページ】 背番号10のTシャツが配られた。

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