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鳥谷敬はなぜ「退団」するのか。
藪恵壹が指摘する阪神の問題点。
posted2019/09/27 11:50
text by
藪恵壹Keiichi Yabu
photograph by
Kyodo News
今シーズンの阪神タイガースは、どこへ向かおうとしていたのでしょうか。育成と勝利のどちらを優先するのか、どっちつかずのまま最終局面を迎えているように感じます。
今月にかけて、チームを長年支えてきた2人の功労者の退団が決定しました。
1人はランディー・メッセンジャー。2010年に来日してからタイガース投手陣の大黒柱として、今季まで5年連続、通算にして6度の開幕投手を務めるなどの活躍を見せましたが、「身体がいうことをきかない」と引退を決断しました。
メッセンジャー自身はやりきったという感じではないでしょうか。会見では涙を流すシーンもありましたが、日本通算100勝まであと2勝に迫りながらも達成できなかったという悔しさや、かつて阪神のエースとしてその100勝をあげたジーン・バッキー氏の死去というショッキングなニュースも相まったのでしょう。
ただ、本当に日本に来て良かった選手ですし、惜しまれながら去る、良い引き際だったと思います。
外野へのコンバート検討は?
そしてもう1人。鳥谷敬が「ユニホームを脱いでください」と引退を迫った揚塩健治球団社長からの勧告を受け、退団を決めました。事実上の戦力外という判断そのものが妥当だったかはさておき、そこに至るまでの過程にはいくつも問題があったと思っています。
まず1つ目は、「外野へのコンバート」について検討された様子がないことです。
元楽天の松井稼頭央のように、内野手が外野手に転向することは、歳を重ねてからでも十分可能です。しかも鳥谷の、ショートからサードへコンバートした1年目でゴールデングラブ賞を獲得したという実績を考慮すれば、再コンバートという選択肢はあって当然だったと思います。
タイガースの外野には糸井嘉男、福留孝介の両ベテランがいますが、その2人を含めて、ベテラン3人で外野1ポジションを競わせれば、チーム内の活性化と若返りにも繋がります。首脳陣からすれば、ベテランがいるとどうしても使いたくなるものですが、大した数字を残せているわけでもないですし、高山俊を始めとして左打ちの外野手は大勢いますから、ベテランは1枠と決めても良かったと思います。ポジションが空けば、自然と若手は出てくるものですよ。